子供が書くサカナの絵に必ずといっていいほど書き込まれる「ヒレ」。実は、サカナのヒレは様々な役割を果たしています。いったいどのような役割をしているのでしょうか。また、独自の進化を遂げた魚のヒレについても紹介していきます。
(アイキャッチ画像出典:PhotoAC)
サカナの「鰭(ヒレ)」
水中のサカナを見た時に体からひらひらと出ている部分(器官)があるかと思います。
その器官の名前を鰭(ヒレ)と言います。
ヒレは魚類だけではなく、クジラなどの哺乳類や、オタマジャクシのなどの両生類にも存在しますが、今回はサカナのヒレについて掘り下げていきます。
サカナのヒレはなぜあるのか
サカナにとってヒレの一番の役割は、水中での身体のバランスを保つことだと言われています。水中では何もしないと沈んでしまったり、横に倒れていったりしてしまうので、そうならないように、ヒレを巧みに動かし、水中でのバランスを保っています。
その他にも水中で泳ぎ進む際の舵(かじ)の役割や、スピードアップ、時にはバックするためにヒレは大いに役立っています。
また、一概にヒレと言っても、ついている場所によって名前が変わり、それぞれが違う役割を持ちます。
それぞれのヒレの名前と役割について説明します。
代表的なヒレの種類と役割
エイなどの軟骨魚類を除いた全ての魚には以下の5つの種類のヒレが存在します。
背ビレ
背びれの一番の役目は、水中でも姿勢保持です。魚は、ヒレを動かさないと、背側の方が筋肉質で重いため、だんだん倒れていき、放っておくと、グルンと半回転してしまいます。
背ビレが細かく動くことにより回転を抑制しているのです。
また、スズキのように鋭利なとげ状や、中にはオコゼやオニカサゴなどのように毒を持った背ビレに発達させた種類もおり、身を守るための武器にもなっています。
胸ビレ
胸ビレは泳ぐ時に前進や後進する時によく使われます。水泳の平泳ぎで腕や手を使って水を掻いて前に進むイメージと同じでしょう。
また、泳ぎだしやブレーキの役目も果たしているため、水中での運動の中核を担っています。
尾ビレ
5つのヒレの中で一番大きく、主として水を掻き、前進する役割を担っています。また、左右への方向転換にも重要な役割を持ち、船でいう舵の役目も果たしています。
ヒレの形は魚種によって異なりますが、マグロのように高速で泳ぐ魚の尾ビレは縦長で三日月型をしているのに対し、クマノミのように、自分のテリトリーを作る魚はヒレがウチワ型をしています。
直線的に速く泳ぐか、細かく機敏に動くかでヒレの形が大きく変わってきます。
臀ビレ
腹鰭と尾鰭の間、肛門の後ろに位置しているヒレです。
背鰭と対になって姿勢の保持をすることが主な役割で、背ビレが右に動くときは尻ビレは左に動き、常に姿勢がまっすぐになるように動きます。
産卵床(卵を産み付ける場所)を作る魚は、この臀ビレを巧みに使って石や砂を動かすこともあります。
腹ビレ
腹ビレは魚種によって位置する場所がかなり異なり、マイワシなどは腹部にあり、スズキなどでは胸部に、イタチウオなどでは喉部にあって、それぞれ、腹位・胸位・喉位と呼ばれています。
役割としては、臀ビレと同じように、姿勢保持に役立っています。
ヒレで進化の度合いが分かる
魚は進化とともにヒレに位置を変化させ、より遊泳能力を高めてきました。体の安定をよくするために胸ビレは上側へ、腹ビレは体の後方から胸位に移りました。
進化の遅れたサメの腹ビレは、体中央からはるか尾のほうに近い肛門付近にあり、イワシ類は腹部、キンメダイは、胸ビレの下方の胸位にあり、ウナギ類に関しては腹ビレがありません。
古代魚のヒレが足に発達した?
現代に生息している肺魚や、生き残っていると言われるシーラカンスなどの魚は肉鰭魚類に分類されます。
このヒレは他の魚たちの鰭よりとは異なり、ヒラヒラとしておらず、内部の骨格がしっかりとしており、肉質のヒレをしています。
この肉質のヒレが足のように発達し、だんだんと両生類へと進化していったとされています。確かに古代魚のシルエットはなんとなくイモリなどの両生類に似ているかもしれません。
ヒレをユニークに進化させたサカナたち
魚の中には、ヒレを様々な形状に進化、発達させた種類の魚がいます。ユニークに進化した魚を紹介していきます。
翼に進化
胸ビレを大きく翼のように進化させたのが「トビウオ」。勢いよく海面に飛び出て、胸ビレを広げてグライダーのように滑空することができます。
大型のものは600mもの距離を飛ぶことができるようです。
足に進化
胸ビレを足のように進化させたのが「ホウボウ」という魚。
ホウボウの胸ビレは2つの役割を担っており、海底を歩く「足」と、味を感じる「舌」としての役割りをしています。
ホウボウは海底を歩きながら、胸ビレで餌となるエビ・カニ・小魚などを探して捕食を行います。
吸盤に進化
ハゼなどの仲間は、2つの腹びれが融合し吸盤のように進化しています。
この腹びれで水底や壁に貼りつくことができ、水の流れが速い環境でも水に流されずに生活を送ることができます。また、背ビレを吸盤のように進化させた魚もいます。
それが「コバンザメ」。大型のジンベイザメなどに張り付いて餌の食べこぼしなどを食べて生活しています。
釣竿に進化
チョウチンアンコウは背ビレを釣竿のように進化させました。先端には誘引突起(イリシウム)と呼ばれる糸こんにゃくのようなひらひらとした疑似餌のようなものが付いています。
深海にすむチョウチンアンコウは、この疑似餌を光らせて獲物のお魚などをおびき寄せ、大きな口と鋭い歯で捕食を行います。
生き残るための進化
サカナにとって、必要不可欠なヒレは、生活スタイルに合わせて、様々な形態に進化してきました。しかし、どれも共通しているのが、生き残るための進化だということです。
トビウオは強者から逃げるためにヒレを発達させ、チョウチンアンコウは身動きが苦手だったために背ビレを変形させました。
どの進化も生き残るための生存戦略なのです。遠い未来のサカナは今とは全く異なった姿なのかもしれません。
<近藤 俊/TSURINEWS・サカナ研究所>
from TSURINEWS https://ift.tt/33nQc8x
via IFTTT
コメント
コメントを投稿