今年のアオリイカは不調だ。不調といっても全く釣れないわけではなく、場所によっては例年以上に釣れている所もある。だが三重県・南伊勢町迫間浦では、今ひとつ調子が上がってこない。それでも釣れていないわけない。良い日にはキロアップ主体に複数釣果も出ているのだ。そこで5月29日、ダメ元ボウズ上等で2人のエキスパートがイカダから春の大型アオリイカを狙った。
(アイキャッチ画像提供:週刊つりニュース中部版・編集部)


ヤエン釣法の釣り方
イカダからアオリイカを狙う場合、主に2つの釣法がある。ひとつは大人気のエギング。エサが必要なく、装備やタックルも比較的少なくて済むのでお手軽だ。
もうひとつはヤエン釣法。これはミチイト+ハリという、極めてシンプルな仕掛けを使う。このハリに生きたアジを付けて泳がせ、アオリイカがアジを抱いたらヤエンと呼ばれる掛けバリをミチイトに沿わせてアオリイカの元に届ける。
アオリイカがアジに夢中になっている間にヤエンが到達し、そこでアワセを入れると掛けバリに掛かるという寸法だ。ただ途中で違和感があればアオリイカはすぐにアジを離してしまう。
ヤエンでヒットした1.1kg(提供:週刊つりニュース中部版・編集部)タイミング、ミチイトの角度などを見極めてヤエンを入れなければアオリイカを手にすることはできないのだ。だがハリに掛けるまでのハラハラドキドキは、エギングでは決して味わえない釣趣。一度味わえば病みつき必至といえるほど、ゲーム性の高い釣りだ。
今回迫間浦のアオリイカに挑戦するのは、戸松慶輔さんとがまかつフィールドテスターの渡邉敦さん。いずれもヤエン釣法に魅せられたエキスパートだ。特に渡邉さんはアユ釣りのエキスパートであり、ヤエン釣法はオトリを泳がせるトモ釣りに通じるものがあるようで、アユ解禁直前のこの時期でもヤエンのアオリイカに挑戦し続けているらしい。
早朝のイカダへ
今回お世話になったのは、迫間浦で古くから渡船業を営む日乃出屋。主に渡船はおかみさんの大下よしかさんが行っており、アオリイカはもちろんクロダイのカカリ釣りファンも通う老舗船宿だ。
午前4時半に出船。この日は最近釣果が上がっている沖側のイカダに渡してもらう。10分ほどで到着し、そそくさと荷物を運んですぐに釣り開始だ。ヤエン釣法は仕掛けがシンプルなので、準備もあっという間。ミチイトの先にハリを結ぶだけで完了だ。
タックル
ヤエンで使うタックルだが、磯や波止で使うのであれば4.5~5.4mの磯ザオが適当だ。だがイカダでその長さは取り回しが悪く、非常に使いにくい。
長くても3m前後で、穂先の軟らかめのものが適当。具体的には7~8ftクラスのメバリングロッド、軟らかめのエギングロッド、ひとつテンヤロッド、海上釣り堀のミャク釣り用のサオなど。あまり穂先が硬いものだとヤエンの掛かりを確認しにくいので、少し軟らかめのものを選びたい。
ヤエンのタックル(作図:週刊つりニュース中部版・編集部)リールはスピニングリールで、2000~3000番が適当。専用のものだと、リアドラグ式でワンタッチでドラグをロックできるものもあるが、通常のスピニングリールでも全く問題はない。
ミチイトはフロロカーボンラインの1.5~2号。細ければ細いほどエサのアジにかかる負担が少なくなるため有利だが、その分切れやすくもなる。イカの引きで切れることはないが、ロープや海藻に擦れた際いとも簡単に切れてしまう。慣れないうちは2号ぐらいを使うと良いだろう。
ヤエンの仕掛け(提供:週刊つりニュース中部版・編集部)ハリは尻尾、もしくは尾ビレ付近にちょこんと刺すだけ。このハリはイカを掛けるものではなく、アジの首輪のようなものなので、外れなければよい。ただし大きなハリはアジが弱りやすいので、細軸で小さめのものを使いたい。アジの大きさにもよるが、チヌバリ1~2号ぐらいがお勧めだ。
ちなみに今回戸松さんが8ftのエギングロッドMLクラス、渡邉さんは11ftのシーバスロッドにがまかつヤエンエサ掛鉤Mを使用していた。
アジの動きに常に注意しよう
さて準備が整ったところで、アジをセットして陸向きにキャスト。エギと違ってアジは自由に泳ぎ回るので、常にその位置を把握しておかなければならない。放置しすぎると、ミチイトがイカダを固定するロープに巻かれたり、藻に突っ込んで根掛かりになったりすることもある。
ミチイトがどの方向に向いているか、緩みがどれぐらい出ているかと常にチェックしておくことが大事だ。
今回は陸向きでイカダの両角に分かれてそれぞれ角の延長線上に向かってキャスト。できるだけ離れてお互いのアジが交差しないように注意しながら釣ることになった。
ヤエンを入れるのはミチイトが45度
アオリイカがアジを抱いたのであれば、ある程度走れば止まってそこでアジを食べ始める。そこでヤエンを入れる位置までイカを誘導する必要がある。イカに気づかれないように、そーっとそーっと寄せてくる。
このときドラグは締めず、イカが走れば迷わずイトを出してやる。イカはアジを抱いているだけなので、違和感があればすぐに離してしまう。
そしてイトの角度が45度になったら、ミチイトをつまんでそっとヤエンをセット。そのそして勢いをつけすぎないように、ヤエンを滑らせていこう。
ヤエンでキャッチした1.7kg(提供:週刊つりニュース中部版・編集部)このときに注意したいのが、決してミチイトを緩めないこと。緩めると高確率でヤエンの掛けバリがミチイトに絡んでしまう。するとそこでヤエンが止まるので、再度ヤエンを回収して入れ直す必要がある。そうなるとその作業の過程で、イカに違和感を与えてしまう可能性大なのだ。
ヤエンの滑る速度を落としたいときはサオ先を下げ気味に。上げたいときはサオ先を上げ気味にする。理想としては、ヤエンがイカの下側に滑り込み、サオをあおったときに胴体に掛けバリが掛かるパターン。うまくサオ先を上下して、ヤエンをイカの下に潜り込ませるイメージで操作しよう。
最悪なのはヤエンに勢いがつきすぎて、イカと正面衝突してしまうこと。そうなると違和感どころか、びっくりしてスミを吐き散らし遠くに逃げていってしまう。
本命以外のアタリが…
最初にアタリが出たのは、渡邉さんのサオだ。ジャーッと勢いよくイトが出されていく。だがいつまでたっても止まらない。イカは海水を噴射して進むため、一度の噴射量分しか進めない。そのため柔らかい節のついた引きをするので、すぐに分かる。
だが渡邉さんにヒットしたそいつは、直線的にジーッとイトを持っていくだけ。この時点で掛かった獲物の想像はついたが、姿を見るまでは分からない。2号のミチイトで数分のやり取りの末、海面に浮いたのは予想通りのアカエイ。
アカエイ(提供:週刊つりニュース中部版・編集部)その後渡邉さんに2発ヒットしたが、いずれもアカエイ。手が痛くなった渡邉さん、どうにもエイに好かれてしまったようだ。
堂々のキロアップ登場
渡邉さんが1匹目のエイをリリースした直後、今度は戸松さんのサオにアタリ。今度はイトの出方から本命のようだ。だが勝負はここから。走りが止まったところで、サオを手にじわじわ寄せにかかる戸松さん。途中2回ほど走られたが、ヤエン専用リールのワンタッチ切り替えで、うまくしのいでヤエン投入ポジションに誘導。
ここでヤエンを投入。サオ先を小刻みに上下させ、そろそろヤエンが到達したころ、ゆっくりサオをあおる。するとしっかりした重みに、エギングロッドがきれいに曲がった。
寄ってくるまでハラハラ(提供:週刊つりニュース中部版・編集部)戸松さんによれば、穂先が軟らかければ少し聞いてみて曲がり込めばヤエンが掛かっている証拠。逆に穂先が戻れば、まだヤエンが掛かっていないとのこと。エギングロッドでは穂先が硬すぎて、しっかりした判別ができなかったようだが、ここはしっかり掛かってくれたようだ。
慎重にやり取りして浮かせてくると、見えたのは紛れもなく本命のアオリイカ。しかもそこそこのサイズだ。渡邉さんが頭からネットを入れて無事キャッチ。なんとか1kgは超えていそうなメスのアオリイカだった。
これを見て発奮した渡邉さんだったが、前述の通りその後はアカエイ2連発…。
だがその後、再び沈黙の時間が流れ続けて投入したアジはいつまでたっても元気なまま。そのまま昼を回ってしまった。
昼食を済ませ再開した直後、合間にエギングをしていた渡邉さんサオが大きく曲がった。だがイカ独特の引きがない。まるで海藻がゴミを引っ掛けたような感じだ。
マダコヒット(提供:週刊つりニュース中部版・編集部)浮いてきたのはなんとタコ。しかも立派なマダコだ。イイダコはこのエリアで何度か見たが、このサイズのマダコは初めて。思わぬ獲物に顔が緩んだワンシーンだった。
エサに対する執着心はヒグマ並み?
そして逃げ回るタコを苦労してスカリに入れた直後、今度はまたもや戸松さんのサオにアタリ。すぐに本命と分かるイトの出方だ。
同じように寄せてきてヤエン投入。ころあいを見計らってアワセを入れると、ずっしりとした重量感にサオが大きく曲がる。やがて10mほど前にアオリイカが見えた。この時はヤエンがしっかり掛かっているように言えたのだが…。
慎重に寄せる(提供:週刊つりニュース中部版・編集部)ここで異変に気付いたアオリイカ、ぱっとアジを離してしまったのだ。掛かっているように見えていたが、ハリが刺さっていなかったようだ。
だがここで諦めるのは早い。アオリイカに限らずイカはエサに対する執着が非常に強い。いったんロックオンした獲物を早々諦めることはまずない。北海道のヒグマ並みの執着心だ。この時もアジは半分以上食われていたが、ヤエンを外して逃げた方向に再びキャストすると、スーッと沈んでいくアジを再び抱いた。
しっかりキャッチ(提供:週刊つりニュース中部版・編集部)今度はすぐにイカの姿を視認。素早くヤエンを投入し、イカの下からフッキング!今度はばっちり決まってネットインまで持ち込むことができた。大きさは500gほどとサイズダウンしたが、価値ある1匹となった。
エギングと違った釣趣
その後渡邉さんが意地のエギングで、ナイスサイズのコウイカをキャッチ。結局アオリイカ1kgクラスと500gの2匹、コウイカ、マダコという釣果で、午後3時半にサオを納めることになった。
ナイスサイズのコウイカ(提供:週刊つりニュース中部版・編集部)事前に聞いていた釣況からダメ元での釣行だったが、終わっていれば本命マルチ安打にまずは納得の結果となった。なお今回釣ったアオリイカは2匹ともメス。交接痕があったことから産卵を控えた身であることが想像できたので、スカリで生かしておいた後に優しくリリースした。
優しくリリース(提供:週刊つりニュース中部版・編集部)食べておいしいアオリイカだが、この時期は産卵期。キープは最低限にとどめておきたい。
エギングも楽しいが、ハラハラドキドキ、スリル満点のヤエン釣法、皆さんもぜひ挑戦してみてほしい。最初はなかなか釣果を上げることが難しいかもしれないが、何でもトライ&エラーの繰り返し。エギングとはまた違った充実感が味わえるはずだ。
<週刊つりニュース中部版・編集部/TSURINEWS編>
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