東京都が、毎年恒例となっている「魚の歩留率」調査結果の公表を行いました。この調査には一体どのような意味があるのでしょうか。
(アイキャッチ画像提供:PhotoAC)
都が特定魚種の「歩留まり」を公表
東京都が毎年実施している「魚の歩留(ぶどまり)結果調査」が今年も行われ、その結果が都のホームページで公開されました。
「歩留調査」とは、水産物における可食部と不可食部の割合を調査するものです。身(筋肉)を可食部、その他の頭、内臓、骨、ひれ、鱗(貝類の場合は殻)などを不可食部と定義し、可食部の割合を調査します。
水産物の歩留調査は東京市の時代である昭和6年に開始され、昭和31年からは継続的に実施されています。このような調査は、我が国では他に例を見ないものだそうです。
なぜ歩留まり調査を行う?
魚介は食用肉と異なり、その全量を食用にすることが難しい食材です。そのためある魚介を仕入れたときに、切身や刺身などがどれくらいとれるかは、その魚の経済性を見る際に大事な指標となり、小売販売時の価格の大きな参考となります。
自然環境下において、魚介類の可食部と不可食部の割合は、魚種や産地、年齢、季節、繁殖・産卵期かそうでないかなどによって大きく変化します。そのため継続して調査することではじめてその魚種の平均的なデータが分かるのです。
また、栄養価の計算においても、有益物質が可食部にどの程度含まれるかなどを算定する際の参考になります。我々の健全な食生活を支えるためのデータであるといえるのです。
刺身は「たったの3割」
今年、歩留調査データが好評されているのはマダイ、クロダイ、アマダイ、シロアマダイ、キンキ、イシダイ、マゴチ、クエ、ヤリイカの9種。様々なグループにまたがり、サイズやシルエットも異なる魚介たちです。
気になる調査結果ですが、刺身の状態にした場合の歩留率は、最も高い数値であったイシダイでも約42%。もっとも代表的な魚のシルエットといえる「タイ型」魚のマダイは38%、クロダイは31%ほどにとどまっています。
比較的歩留のよくない体型と言われる「ハタ・カサゴ型」の大型魚であるクエは29%と3割を切り、ヤリイカに至ってはたったの20%でした。
つまり、どんな魚介も、刺身だけ、あるいは食べやすい筋肉部だけを食べようとすると60~80%は廃棄物になってしまうのです。ぶり大根や兜煮、あら汁などといった「あら」を活用する調理法の大切さがわかりますね。
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<脇本 哲朗/サカナ研究所>
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