いよいよ渓流のシーズンがやって来た。今回は初期の放流物から、盛期のヒレピン、本流の大物までシーズンを通した楽しみ方を紹介したいと思う。
(アイキャッチ画像提供:週刊つりニュース中部版 石橋英之)
“祝”渓流解禁
河川によって解禁日や放流物(成魚、稚魚、発眼卵)に違いがあり狙い方も違ってくるが、一般的に2~3月は成魚放流物、4~5月は半天然、天然物、以降は本流の大物狙いというのが大まかなシーズンの楽しみ方になるかと思う。
1つの河川でこの狙いができるのが一番だが、成魚放流物狙いの河川とヒレピン狙いの河川に分けるのも面白い。河川によって成魚放流も解禁前日や当日放流など、方法が違ったり、追加放流のあるなしの違いもあるので、事前の情報確認が必要だ。
成魚放流物は、当然解禁日や追加放流直後がよく釣れ人も多いが、個人的には釣り残しのスレっからしを、あの手この手で釣るのも違った楽しみ方だと思っている。
成魚狙いならウキ釣り
仕掛けだが、サオは河川に合わせて5m前後のマルチタイプがお勧めだ。釣り方はミャク釣りが基本だが、今回はウキ釣りを紹介したい。狙うポイントは淵など大場所や、流芯の対岸など比較的長ザオを必要とする流れの緩いポイントだ。
例えば6mのサオを使った場合、仕掛けをめいっぱい振り込んだとしても、最終的には仕掛けの自重でサオ下、自分の立ち位置から4mぐらいの所に落ち着いてしまう。しかしウキを使うと、ウキ下1mと設定した場合、サオの全長6m、空中イト5m、合わせて11mのポイントで仕掛けをキープできる。
実質半径11m内が狙えることになり、ミャク釣りの数倍のエリアをカバーできる。成魚放流物の場合、魚がたまっていることが多く、仕掛けをポイントにとどめておけることが有利になる。ミャク釣りの仕掛けで届かないので、釣り人が結構立ち込んでいる姿を見るが、やはり魚の警戒心を強めてしまいお勧めできない。
私もポケットに、常にこの仕掛けを1セット携帯している。ここで注意するのはウキの形状だ。玉ウキを使っている人を見かけるが、玉ウキは抵抗が強くアタリが取りづらくお勧めできない。トウガラシウキが抵抗も少なく、アタリも取りやすい。
縦の釣りを意識
ウキの浮力は小さめで、浮力に合ったオモリを合わせよう。ウキ下は初めは底から合わせ、10cm刻みで浅くしていくといいだろう。ミャク釣りが横を釣るのに対し、ウキ釣りは縦の釣りを意識するといいと思う。
特にイクラの場合、しばらくアタリがなければエサ切りをしよう、常に新しいエサを使うことと、まきエサ効果から釣果を伸ばせると思う。
解禁後の釣り残しを狙う場合は、放流ポイントから弱って下った魚が着く石裏や小さなヨレなど、ピンポイントを狙うといいだろう。
淵など止水ポイントは魚が残りやすい半面、他の釣り人からも狙われるためスレている。このスレっからしを狙う場合は細仕掛けで誘いを駆使するのも楽しいが、基本的に足を使っての拾い釣りがお勧めだ。
エサ
エサは成魚放流物や水温が低いときはイクラをメインに、ミミズなどにおいで誘うものが有効になることが多いが、ブドウムシやカワムシ(キンパク)など2種類以上を用意しよう。
食いが悪くなれば早めにローテーションして、その日のアタリエサを見つけるのも釣果を伸ばすコツだ。
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4月以降は上流のヒレピン狙い
次に4月以降のヒレピン狙い。本流の上流域、各支流が狙いめになる。エサはカワムシ(キンパク、ヒラタ、ピンピン)が圧倒的に有利だが、この時期にはエサ取りも出始めるため、多めに持参するとともに予備にブドウムシも用意しよう。カワムシは釣行する河川の現場で捕れればいいが、採取するポイント(川)を作っておこう。
仕掛けは圧倒的に細仕掛けが有利で、ポイントはオモリだ。初期の成魚放流物は流れの緩い底にエサを沈めるため少し大きめを使うが、ヒレピンは流れのある瀬を狙うので、エサを自然に流すことが一番大事になる。
水中イトを細くすれば小さなオモリで自然に流すことができる。オモリが大きく、エサを引っ張るような流し方では魚に見切られることもある。
流すコツは目印だ。一番下の目印を水面ぎりぎりに設定し、サオ先で仕掛けを持ち上げないように自然と仕掛けを流し、水面の流れより目印がゆっくり流れるように調整する。
軽い仕掛けを使う場合、軟らかいサオが有利だ。カワムシが孵化(うか)するシーズンで、魚が水面を意識すると仕掛けを水面直下に流すことも有効。この時期のヒレピンは引きも強く、虫を食べてよく肥えている。
増水の後はミミズが有利だ。ミミズを使う場合は、少し大きめのオモリを使い、アワセもワンテンポ遅らせるといい。
先行者優先&装備は万全に
渓流のマナーで大事なのは先行者優先であること。基本釣り上りだから先行者がいるときはその人の上流に入る場合、釣るエリアを確保して入川する。釣り場にもよるが、自分が釣る距離をイメージして距離を開けるようにしよう。
もう1つの天然物狙いに源流域がある。源流で注意すべきは、まず単独行は絶対にやめよう。特に初めての人は経験者と同行すること。滝などを高巻きする所もあり、滑落の危険もある。
装備も最低限20mザイル、5万分の1の地図、ライト、非常食は持参しよう。前述した通り先行者優先だ。車止めには夜明け前に着いて、夜明けとともに先着者に沢割をしてもらって、ポイントを決めよう。
過剰なキープは控えよう
源流域で特にお願いしたいのはキープサイズとキープ数だ。キープサイズは河川、県によって決められており、一般的に12cmと定められている場合が多いが、個人的にはハリをのんだとき以外は16cm以上、あるいはキープは10匹と決めている。一部を除き源流域は純粋に自然孵化した魚だけなので、乱獲してしまうと魚がいなくなる。
源流域はエサが少ないので、食いがいい。そのため釣り人によって、魚がいなくなった沢をいくつも見てきた。私も釣った魚を放しているが、なかなか復活できない。また楽しませてくれる自然に感謝し、ゴミも絶対に捨てないでほしい。
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本流の大物はポイントを絞る
さて本流の大物だが、海からの遡上物がサツキマスと呼ばれるように、ゴールデンウイーク前後からがシーズン。遡上物、サボリ物ともに、冬場に海や川の深場で年を越した魚が水温の上昇とともに上流域に上ってくる。
その途中で着くポイントがあり、基本的に毎年魚が入る所は一緒のように思う。そのポイントをどれだけ持っているかが大事だ。初めての人は経験者に教えてもらい、同じようなポイントを探すといい。
流れ出しから開きがあり、魚が休む所で大石の沈み石が絡むポイントはお勧めだ。ポイントに近づくときに注意するのは手前のへチだ。どうしても一級ポイントを狙いたくなるが、川に近づいたときに手前のヘチから大物が逃げていったことが何回もあった。
対岸のヘチが好ポイントになることが多いが、逆を言えば手前のヘチも好ポイントになる。まずは手前から釣り始めよう。
粘るかランガンか
さて本命ポイントの攻め方について。私見だがシラメ系は流れの緩い開きのカケアガリに着いていることが多く、アマゴ系は流れ込みの付近で釣れることが多いと思う。
釣り方だが、エン堤など大場所は一日粘って魚が口を使うチャンスを狙う方法と、ポイントをランガンしやる気のある魚を拾っていく方法があるので、自分に合った釣り方を見つけてほしい。
同じポイントでも気温(水温)や水位の変化で魚が入る時期が変わるので、一度で諦めずに日を変えて狙ってみよう。
工夫して掛ければ値千金
エサだがこの時期はウグイをはじめ、エサ取りが多くなる。私はミミズかクロカワムシ、ブドウムシで釣っている。サオは狙うポイント、魚のサイズで変わってくるが、サツキクラスを狙う場合は8~9m、もどりを中心に狙うときは中流から上流で7~8m。どちらも一日振って疲れないものを用意してほしい。
本流釣りでよく聞くのが、ポイントを絞れないということだが、基本は同じだ。流れ込み、ヨレ、開きと構成しているのは同じ。Yパターン、ICパターンなど流れに仕掛けを乗せることを意識しよう。ただし上流域と違い、エサが豊富なため自分からエサを追うことは少なく、自分の正面に流れてきたものを捕食するイメージだ。
以前33cmを釣った時は、Yパターンの奥の筋をミミズで流していた時に3度アタリがあっても乗らず、手前の筋から流し直すと一発で食ってきたことがある。立ち位置、流す筋など、自分で工夫し掛けた1匹は釣れた魚ではなく、釣った価値のある魚だ。当然魚体もよく肥えており、長さより体高のある魚に出会えるのが本流の楽しみだ。
大型に期待
私もそうだが、アマゴ釣りをする人はアユ釣りをする人が多く、最近はアユの解禁が早くなったこともあってか、私のホームグラウンドでは本流釣り師の姿が少なくなったように思う。その分釣れる確率は高いはず。特に今年は昨年の夏場に大水が続いたため、魚が残っており楽しみだ。
自分は三重県に住んでおり、櫛田川上流によく行く。3月中は成魚放流物で遊び、4月以降各支流と源流域に入る。5月以降はアユが解禁されるが、朝一番は本流域でアマゴを狙い、水温が上昇してくる9時ごろからアユ釣りと、今はやりの二刀流で楽しんでいる。尺上はコンスタントに釣れており過去には50cm近い大物の実績もある。
コロナ過で趣味の世界にも変化が出てきた。渓流釣りは密を避けてできる楽しみだが、これから始めようと思う人はゴミの持ち帰りなどマナーを守って楽しんでほしい。
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