日本最大の湖・琵琶湖があり、貴重な淡水魚が多数生息する滋賀県。その生態系を守るために「魚に優しい水田」を作る運動が行われています。
(アイキャッチ画像提供:PhotoAC)
「魚のゆりかご水田」で田植え
滋賀県中南部に位置し、日本最大の湖・琵琶湖に面する野洲市。ここで先日、「魚のゆりかご水田」の田植え体験会が実施されました。
今回は新型コロナウイルス感染症の影響を勘案し県内在住者に限定されましたが、各地から訪れた参加者が、昔ながらの手作業による田植えを体験しました。親子での参加も多く、慣れない泥田に足を取られて苦戦しながらも田植え作業を楽しんでいました。
今回この「魚のゆりかご水田」に植えられた品種はコシヒカリで、順調に行けば9月頃に収穫が可能。今後は稲の収穫体験会が行われるほか、水田の生物の観察会も実施される予定だといいます。(『魚のゆりかご水田で田植え/滋賀』びわ湖放送 2021.5.15)
「魚のゆりかご水田」とは?
この「魚のゆりかご水田」とは、びわ湖と田んぼを水路でつなぎ魚が水田に入り込みやすいようにしたものです。具体的には、水田の排水路に「堰上式魚道」と呼ばれる階段状になった水路を設けます。これにより、排水路から水田に魚が遡っていけるようになっています。
また、場所によっては田んぼひとつ(一筆)ごとに木製の簡易的な魚道を設置する「一筆型魚道」というタイプの魚道も設置されています。
野洲市須原では、地域団体によりこの取り組みが進められています。「魚のゆりかご水田」はオーナー制になっており、オーナーになると田植えから収穫までを優先的に体験することができるそうです。
なぜ「水田がゆりかごになる」のか
ところでなぜ「水田が魚のゆりかごになる」のでしょうか。
もともと淡水魚の仲間には、池沼や河川の浅瀬を産卵場所にするものが多く見られます。古くから稲作が盛んに行われてきた日本では、水田がそのような魚たちの格好の産卵場所になってきました。
しかし水田の近代化やそれに伴う稲作の機械化が進むと、排水性能が低くぬかるみ、機械を導入しづらい「湿田」から、排水性能が高く機械化が容易な「乾田」へと換えていく試みが進められるようになりました。
そして乾田化に伴い、排水路の性能を高めるために水田の水面と比べ低い位置に排水路を通すようになりました。その結果、排水路と水田の間に高低差ができてしまい、魚が入り込めなくなったのです。
琵琶湖周辺では、水田と同様に魚たちの産卵場所となってきた、浅い池状の水たまりである「内湖」が埋め立てにより激減してしまいました。そのことと乾田化が合わさったことで、琵琶湖に産する貴重な固有の魚もその数を大きく減らしてしまったといいます。
「ゆりかご水田」運動は、琵琶湖の貴重な生態系を守ることにつながるのです。
<脇本 哲朗/サカナ研究所>
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