日本食に欠かせない食材であるコンブ。日本では北海道を中心に豊富な水揚げがありましたが、最近は温暖化により漁獲を大きく減らしています。
(アイキャッチ画像提供:PhotoAC)
コンブの仲間がピンチ
オーストラリア大陸の南に位置するタスマニア島。北海道より一回り小さいこの島は緯度が高く、周囲に広がる冷たい海には、コンブの仲間で世界最大の海藻としても知られるジャイアントケルプが茂っています。栄養の多く水温の低い海で、このジャイアントケルプはときに50m以上の大きさにまで成長します。
しかし近年、このジャイアントケルプが大きな危機に見舞われています。気候変動により、オーストラリア大陸の東から、ジャイアントケルプが生息する海域に水温が高く栄養分の少ない海水が流れ込むようになってしまったのです。これにより、ジャイアントケルプは最近数十年の間に95%も失われてしまいました。
現在は地元大学の研究所がこのジャイアントケルプの再生に取り組んでおり、日本人研究者も協力しながら必死の保護活動が行われています。(『温暖化で消失、巨大コンブの森を再生へ 豪タスマニア島』朝日新聞 2021.4.22)
コンブの森は海のゆりかご
ジャイアントケルプをはじめとしたコンブの仲間がつくる環境は、様々な海洋生物のゆりかごとなる貴重なものです。様々な魚やロブスター、アワビ、タツノオトシゴなど数百種類の野生生物のすみかになっています。またそれらの生物を餌とするラッコなどの貴重な哺乳類も育んできました。
タスマニア島のジャイアントケルプがなくなった海中では、長さ1mほどの別の海藻類が生えてきているそうです。しかしこの海藻が、これまでのような多様な生物たちの生息地を提供する存在になるかどうかはわからないといいます。
研究者は「コンブの森の再生は、多くの動物が住む陸上の森を再生するのと同じだ」と説明しています。
日本でも昆布消滅の可能性
昆布がピンチに陥っているのは、実は日本の海も同様です。北海道大の研究グループは2020年に「地球温暖化に伴う海水温上昇のため、ナガコンブやマコンブなど日本近海の天然コンブのうち主要な11種が2090年代までに消滅する可能性がある」と発表しました。
温暖化が現状のまま進めば、北海道周辺の海水温は2090年代には、1980年代と比較して最大10℃ほど上昇するといいます。その結果、昆布の分布域が現在の0~25%にまで減少してしまうという見通しになるそうです。
昆布は日本では食生活にも欠かせない存在ですが、日本昆布協会によると、すでに漁獲高ならびに市場供給量は年々減少傾向にあるそうです。2019年度の市場供給量の推計値は約1万3千tで、ピークの1989年と比べると3分の1程度まで減少しています。
このまま温暖化が進む限り、昆布だしの料理が食べられない未来はあっという間に訪れてしまうでしょう。
<脇本 哲朗/サカナ研究所>
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