晩秋から初冬、若狭・越前沖ではタルイカ(ソデイカ)釣りシーズンが到来。今回のフィシングクリニックでは、福井県早瀬港・新漁丸での実釣も併せ、餌釣りでのタルイカ釣りを紹介しよう!
(アイキャッチ画像提供:WEBライター・近藤惣一郎)
日本海の怪物「タルイカ」
地元漁師は古くから大きなタルを使ってソデイカを獲るため、ここではタルイカと呼ばれる。10kg超えは勿論、大きいと20kg以上に成長。まさに日本海のモンスターだ。
タルイカ釣りは、良い群に当たれば、沖釣り初心者であっても、豪快な引きを堪能し、大物を釣り上げるチャンスが非常に高い。サンマやサバ餌を丸ごと一匹通して使う「タルイカ針」で遊漁でもタルイカを狙うようになって20数年。ここ数年は実績のある専用ジグも開発され、ベテランも若者も以前より気軽に、そしてスポーティーにタルイカを狙えるようになってきた。
北陸地方以外では遊漁で狙うことがなく、馴染みのない方々も多いのでタルイカを解説する。タルイカという呼称は、若狭・越前の漁師が、餌を付けた仕掛けを、大きなタルに縛り付ける漁法に由来しており、正式名は剣の部分が袖のように大きいためソデイカという。沖縄辺りで生まれた後、対馬海流に乗って北上する。
雄雌のつがい、あるいは兄弟で行動するとされ。他のイカ同様、一年で生涯を終えるが、急激な成長を見せ、成体は10kg級がレギュラー、20kgを超えることもある。
シーズン・ポイント
9月中旬以降、水深80m前後を狙う、秋のマイカ(剣先イカ)釣りで、突然竿先が引き込まれ、仕掛けが切られるアタリが出れば、タルイカ回遊の合図。こうなると、いよいよ船長達は、タルイカに狙いを移して行くのである。
若狭沖でも東部、水深200m前後の越前海溝上が主なポイントである。出船は小浜、美浜、敦賀、越前界隈。乗合、仕立とも可能な船宿が多い。いずれの港からでも、ポイントまでは、片道1時間から1時間半の航程を要す。船明かりを灯しての夜釣りで、半夜便なら夕方早めに出船し、深夜便もある。
タックル・仕掛け
タルイカの遊漁が盛んになったのは2000年頃から。2015年辺りから優良なタルイカジグも開発され実績を重ね、最近ではジギングに主流は移りつつある。今後さらにタックルや釣法が変化・発展する可能性もある。
私自身は漁師が元来用いてきた、長さ30cm程のタルイカ専用スッテ針にサンマやサバを付けたエサ釣りで今も行っている。専用スッテ針やジグは、主立った地元ショップや通販で手に入る。
エサ釣りの場合中型までの数釣りなら胴突き、大物狙いは天秤仕掛けが基本(仕掛け図参照)。しかし、胴突きでも十分大物が掛かる。いずれもクッションがあったほうがやりとりでのバラシは少なくなるかも知れないが、取り込み時にクッションがあるとイカに暴れさせる自由度を持たせ、逆に逃げられてしまうリスクもある。クッションの使用は船長と事前に相談する。
天秤仕掛け
天秤仕掛けのハリスは20号以上のナイロンライン、もしくはフロロカーボンラインで長さは3m程。タルイカ針は重量もありハリスが細いことに有利性は全く無い。ハリスが短いと、船の揺れでスッテの動きが不自然になり、タルイカは餌に食い付く確率は落ちる。ただ長すぎると、アタリが取り難く、カンナ掛かりも悪い。また取り込みも難しくなる。
胴突き仕掛け
胴突き仕掛けは、幹糸先端に、スッテ、錘を直接取り付けるスタイルが、絡みが無く、トラブルも少ない。タルイカが小型主体の日なら、スルメイカ用の餌巻き錘スッテに、魚の切り身などを付けて狙っても良い。
餌の付け方
タルイカスッテに餌を付けるときは、スナップを外し、サバやサンマの口から肛門にかけ、スッテ軸を通した後、再びスナップで取り付ける。
餌は船宿が用意してくれる場合と、持参する必要がある場合があるが、この釣りでは、餌によって大きく釣果に差がでることを経験する。色々持ち合わせるのに越したことはない。なお、魚影が濃く、活性が高い日は、多少、餌が囓られ傷んでも、大丈夫。細いワイヤーなどで餌を固定するのも良い。また、アシストフックを取り付け、餌の固定に役立てると共に、餌をよりアピールするために、蛍光ビーズのデコレーションを施し、効果を上げたこともあった。
注意点
注意したいのは、各サルカンやスナップの強度、そしてその接続である。市販の信頼できるサルカンやスナップ、あるいはハワイアンフックには、耐強度が表示してある。50kgの力に耐えられれば、まず問題なく、インターロック式(スナップの先端が鉤状に曲がって外れにくいもの)のスナップならば1/0号で良い。サ
イズだけ大きくても、インターロック式でないスナップは、強度が弱い。また糸と各サルカンの接続は、特に注意したい。通常のサルカン結びの後、編み込みにしたり、各糸の端にチチワを作り、これにハワイアンフックを取り付けてもよい。
水中ライトは必需品だが、新品であっても、傷む場合も多い。予備は必ず持ち合わせたい。タルイカの重量、引きが直接かかるように接続すると、水中ライトを壊して、大物は逃げてゆく。力がかからないブランコ式が良いだろう。
とにかく、一箇所でも弱いところがあれば、それが仕掛け全体の強度となり、真の大物は、ブレイクして、逃げてゆく。船長、経験者の意見を参考に、十分な備えで挑みたい。
釣り方
タナ自体は70~100mライン前後で、極端に深くなく、80~120号の錘を用いることが多い。大人数の乗合い時は、他者そしてジギングの釣り人とのおまつりを防ぐべく、船長から錘指定が出ることもあるが、釣り座、船の流れを観て臨機応変に選ぶことが多い。
タルイカは小型でも3kg、レギュラーで5~7kg、大きいと10kgを超え、その引き込みは、言うまでもなく強烈。天秤、胴突きとも、置き竿にする場合は、うねりによる船の揺れがもたらす、スッテの不自然な動きを吸収する、
タックル
次にタルイカのタックルについて。
ロッド
胴調子の竿が良いが、最近はジギングの影響も受け、長さ2mほどで73調子、イカが掛かったら64や55に曲がり込む、操作性と柔軟性を併せ持ったゲームロッドを手持ちにして攻めるスタイルがエサ釣りでも主流になってきている。軟らかい胴調子ロッドでは、振られて釣りにならない。
リール
リールは DAIWAなら500番の電動リールが基本だが、中型以上の手巻き両軸リールでもやれる。手返しは悪いが、終始、手巻きでやりとりすれば、釣り上げた喜びも倍増する。カウンターもあった方が便利。
道糸
道糸は、ラインマーカー付きのPEライン3~4号。径が太いと強度は増すが、潮の抵抗を受けやすく、感度も悪くなり、おまつりの原因になる。ジギングの場合、PEライン2号の釣り人が多いので、5号以上は使用しないように。このあたりは事前に船長に要確認。
なおPEラインは、強度が高いが、傷があると極端に脆くなるので、古いラインを巻いてある場合は、新品に巻き替える。
釣り方のポイント
この釣りは、活性が高く、魚影の濃い群に当たれば、エサを付けた仕掛けを、絡まずにタナに降ろしさえすれば、アタリは出る。
狙い目の日
シケ明けなど、タルイカがお腹を空かしている日は狙い目だ。また新月や雲の多い日は月夜周りに較べ釣果は良くなる。
しかし、そんな好条件でないときは、まめなタナ探りと、誘いアクションの優劣、エサの選択で、アタリに差が大きく出る。同じ釣り人ばかりに、あたりが出ることも珍しくないのである。
タナ・誘い方
タナが掴めない時、乗りが極めて悪い日は、巻き上げ誘い、もしくは、落とし込みで、広範囲のタナをゆっくり誘いながら探る。この日もそうであったが一旦タルイカが釣れだし、タナの見当が付けば、その上下10m程で、仕掛けを数m位ずつ、落とし込んでは止める誘いを入れたり、シャクリを入れてみる。
ただし、タルイカスッテは重いので、速いシャクリは仕掛けが絡みやすい。海中をイメージして、ゆっくり行う。なお、タナは時間帯で、変化するので、アタリが遠のけば、再び広範囲を探るのがよい。
ただ大切なことは一日に1度のみ、あるいは数回訪れる時合いに、釣れているタナを外すことなく集中して、仕掛けを絡ませることなく攻めることが出来るか否かが、基本的だがタルイカを仕留める最も大切な条件である。
因みに12月3日は7名の釣り人で、揚がったタルイカはこの時合いの3匹であった。
アワセ~やり取り
タルイカ釣りでも、早アワセは厳禁。前アタリが出たら、竿を手持ちに、うねりやイカの動きに合わせて、竿先を上下したりリーリングを微妙に行い、常に道糸を適度に張った状態を保ちつつ、イカからのシグナルをとり、違和感を与えないよう試みる。そして、大きな引き込みが訪れたら、竿がのされることが無いよう竿先が水平以上になるように構え、フッキングを確実なものにする。
掛かった獲物の大きさやカンナの掛かり具合は、始めの引き込みの強さで、おおよそ見当が付く。10kg超えは、引き込みの後、道糸を引っ張って走り出す。この釣りでは、ドラッグ調整は緩めが基本。イカが餌をくわえているだけのことや、カンナが掛かっていても甘かったり、脚一本の場合も多い。
無理をせず、相手が強烈に引っ張る際は竿の弾力で耐えつつ、ドラグを滑らせて、道糸を出せば良い。そして、抵抗が弱まったタイミングで、巻き取ってゆく。電動でも巻き取れない場合は、ガイド部分の道糸を手で手繰り寄せる。とにかく、焦らず、時間を十分掛ければよい。一旦かなり寄せても、40mラインを切ったあたりで、船明かりに気が付くと、必ずといって良いほど、逆噴射を強める。再び元のライン長まで逆戻することも珍しくない。
取り込み
リールカウンターが0に近づいたら、いよいよクライマックス。小型でも、抜き上げると、バラしやすいので、胴部(三角の部分)からタモですくう。中型以上はギャフで掛けることになる。実は大きなタルイカの取り込みは、大物青物の取り込み以上に、難しいとも言える。大抵、10kg超えの大物は、船長がかけより、取り込んでくれる場合が多い。勿論、仲間と助け合っても良いだろう。しかし、ある程度経験を積み、自らで取り込んでこそ、正々堂々の勝負と考えれば、仮に逃がすリスクが高くなっても、自分で、ギャフを掛けたい。
あまり船縁直下まで、イカを無理に手繰り寄せようとすると、イカは逆噴射を強め、バラシの原因となる。また、船縁の高い大型乗合船ほど、船縁直下は照明の陰となり、視野が悪い。ミヨシ寄りは船縁も高いのに加え、揺れの影響をまともに受け、難易度は高まる。
理想的には、イカが抵抗を弱めたタイミングを見て、ハリスを手繰り、胴部に、ギャフが掛けられる距離までタルイカが近づいたら、それ以上無理に引き寄せず、ギャフを効き腕に持ち、反対の腕で掴んだハリスを一瞬緩めるようにして、素早く、胴体の眼や脚側でなく、三角の部分にギャフを入れる。この時、ハリスを引っ張り、脚や口側を上げてしまうことは、胴体が下に向けてしまうため、ギャフを入れにくくなる。イカの胴体が、船縁に平行に近い形で、浮かせた状態を作り出せれば、さらにギャフを入れやすい。
新漁丸でタルイカ実釣
私が福井・美浜早瀬漁港の新漁丸にて今期釣行した12月3日は月夜周り。ただ通り雨が降る日和で雲があったのが幸いした。西風が強まり午後10時半納竿の早揚がりではあったが、午後7時から8時の短い時合いに集中し、運良く10kgと7kg、2匹の本命をゲット出来た。
10分かけ10kg浮上
午後7時、魚探で餌の感度を捉えた船長から70mの指示ダナが出され、忠実にその水深でサンマ餌のタルイカスッテを落とし込んでいくと、糸フケが出てタルイカがサンマに触れてきたアタリ。
糸フケを静かに巻きとってゆくと、ショットバイパーのサオ先が小さく震えるように上下した後、針に掛かったタルイカが走り出し、サオ先が大きく引き込まれ、ラインが引き出された。親指でシーボーグ500MJのスプールを押さえながら一旦アワセを入れ100Mラインまで糸が出るとランは落ち着いた。
そこからドラグを徐々に締めつつ、相手の弱り具合を感じとりながら、電動巻きでラインテンションが一定に保たれることを注意して引き寄せて行った。やりとり途中強烈な反抗を披露する際には慌てず糸を出し、10分程のやりとりで10kgの1匹目をゲット。
7kg級を追釣
タルイカは時合いになると既述の如くヒットが続くことが多い。午後7時半過ぎ、今度は釣り座にセットしたポータブル魚探で80mに餌の感度。この水深でスッテ針を落とし込んで行くと狙い通りヒット。
1匹目同様アワセを入れ慎重に巻き上げていたが10m程で針が外れる。こんな時は往々にして再び餌を落とし込む誘いを掛ければ抱いてくる。その例に漏れず、5分ほど、このタナで落とし込んだり、巻き上げの誘いを繰り返していると再び針掛かり。
7kg級の2匹目を手中に。このイカを揚げた時、反対舷の海面近くに良型タルイカが浮いて来たのを観た船長が、ジギングアングラーにジグをキャストさせると、見事ヒット!10kg級が仕留められた。タルイカはつがいで行動するため、私が釣り上げたタルイカのもう一匹がそれを追って浮いて来たのだろう。
保存・調理法
季節的にも夜の気温は低く、傷みにくいが、大型クーラーにしっかり氷を入れて、持ち帰りたい。釣った以上は、しっかり処理して、美味しくいただく。大きな魚体から、食味はイマイチと誤解されやすいが、けっこう旨い。
刺身でも、何でも、そのまま食べると身は固いので、皮を剥き(ミカンを入れるナイロンネットなどで擦れば剥き易い)、身をノート程の大きさにカットし、必ず最低3日以上は冷凍し、水分を含ませることがコツ。解凍すれば、とても柔らかくなる。
大量に身が採れ、スティック状にカットした天ぷらは、皆大喜びする。中華料理に使ったり、ステーキも面白い。刺身でも、十分いける。
タルイカ釣行動画
<近藤惣一郎/TSURINEWS・WEBライター>
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