高級魚として知られているヒラメ。通年需要が高く、養殖も盛んに行われている魚ですが、天然ものと養殖・栽培ものの見分けは他の魚と比べてかなり簡単であると言えます。
(アイキャッチ画像提供:週刊つりニュース編集部)
主要な養殖魚・ヒラメ
「鯛や平目の舞い踊る」なんて言葉もある通り、古くから「高級魚」の代名詞であったヒラメ。現在は年間6,000t前後の漁獲があり、需要の高い状況が続いています。
日本周辺のヒラメ資源量は少なくはないものの、地域によっては漁獲量が資源量の50%に迫るような時もあります。そのため養殖ものの需要も高く、全国で養殖が盛んに行われています。(『ヒラメ資源の現状と今後の展開』「日本海 リサーチ&トピックス10号」上原伸二,井関智明,八木佑太 2012.2)
ヒラメの養殖は1997年にピークを迎え、その後は減少傾向となっています。しかし現在でも匹数ベースではマダイを上回り、主要養殖魚種の一つと言えます。また養殖だけでなく、稚魚の状態で自然環境下に放流される「栽培漁業」のジャンルにおいても、サケと並ぶ代表種のひとつです。最近では韓国で養殖されたものの輸入も多くなっているようです。
養殖物と天然物がひと目でわかるヒラメ
このように養殖・栽培漁業が盛んなヒラメは、当然ながら市場でも天然物と養殖物、栽培漁業で放流された物が混在した状態で販売されています。そしてこれらは、目視だけで互いに区別することも、ある程度は可能となっています。確認するポイントは裏面。
純天然物のヒラメは、無眼側(いわゆる裏側)が純白になっています。半透明の白い鱗に覆われているためです。しかし放流物は無眼側の鱗の一部が、有眼側と同様の茶色~黒褐色に色づいていることが多いです。程度に差はありますが、白と黒のまだら模様になってしまうため、このような放流ヒラメは「パンダビラメ」と呼ばれています。
養殖物ではさらにひどく、無眼側全体が黒褐色になり、遠目には有眼側と区別がつかないような状態になってしまうこともあります。このような色素異常は「無眼側黒化」と呼ばれており、味に影響はないのですが、見た目が悪く市場価値を下げてしまうとして漁業者・市場関係者からはとても嫌われています。無眼側黒化はヒラメのみならず、カレイ目の養殖魚に広く発生するものとして知られています。
黒化を防ぐことはできるのか
養殖が始まって以来、この無眼側黒化への対策が研究されてきました。そして現在では「浮遊期黒化」と「着底期黒化」の2つの要因があることが判明しています。
ヒラメなどのカレイ目の魚は、孵化直後に、一般的な魚同様に海中の中層を泳ぎ回る「浮遊期」という時期を経ます。「浮遊期黒化」はこの時期に発生するものと考えられているのですが、与えるエサを工夫することで浮遊期そのものを短くし、黒化を防ぐ方法が研究されています。
「着底期黒化」は、ヒラメが海底に着底して生活するようになったあとで発生するものとされ、養殖水槽に砂を敷いたりするなど手を加えることで、ある程度防げることがわかっています。ただ浮遊期・着底期黒化のいずれも、完全に黒化を防ぐ方法はまだ見つかっていません。(『ヒラメ無限側黒化防止対策試験』青森県産業技術センター)
養殖物も美味しい
大事なことは、「パンダヒラメ」の味わいは天然物とほぼ変わらない、ということ。見た目に惑わされずに目利きをする力も、美味しいヒラメを食べるための条件と言えるでしょう。
<脇本 哲朗/サカナ研究所>
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