侍Dr.近藤惣一郎のフィッシングクリニック:夏の沖釣り『熱中症』対策

今日の問診票

新型コロナウイルスで混乱している間に、季節は夏。釣り人にとって夏の沖釣りは魚との闘いであると共に暑さとの闘いです。熱中症を予防して安全で楽しく釣りを行い、次の日に疲れを残さないような水分摂取についてアドバイスをお願いします。

(アイキャッチ画像提供:WEBライター・近藤惣一郎)

侍Dr.近藤惣一郎のフィッシングクリニック:夏の沖釣り『熱中症』対策

診断結果

ヒトの身体の約60%は水分で、水分は人間が生きるうえで重要な役割を持っています。体の脱水が進むとその先に待つのは「熱中症」です。

処方箋

船釣りでは1.5〜2L(500ccのペットボトルなら3、4本)、沖あがりが正午を超えるようであればさらに追加の水分を持参すべき。「早め」「こまめな」水分と塩分補給を心掛けましょう。身体の火照りを感じた時点から飲み始めるようでは遅いです。

体内の水のはたらき

ヒトの身体に含まれる水分量は、およそ体重の50~80%で加齢とともに少なくなります。成人男性なら体重の60%で、血液・血漿(けっしょう)として5%、間質(組織)に15%、細胞内に40%分布していて、血管に水分が蓄えられているというよりは、瑞々しい野菜のように組織・細胞自体が水分で潤っているわけです。

ヒトは体温を正常に維持するために、周囲の環境から受ける熱や運動によって生じた熱を、汗が蒸発するときの気化熱によって皮膚から放散します。また、皮下の血液循環により、身体の深部の熱を体表面に運び、皮膚から外部へ熱を逃がします。汗はちょうど「打ち水」と同じで、汗が蒸発するときに皮膚表面から 気化熱を奪って熱を放散しています。

100gの汗をかくと、それが全て皮膚から蒸発したとして(1gの汗の蒸発は0.58kcalの熱を奪う)体重70kgの人では体温を約1°C下げることかできます。体内の水のはたらきは、この体温調節(熱の運搬、蒸発による放熱)の他、栄養素や老廃物の運搬および内部環境を維持(体液の濃度、浸透圧の調整)することが挙げられ、当然のことですが水分は生命維持に大変重要なのです。

侍Dr.近藤惣一郎のフィッシングクリニック:夏の沖釣り『熱中症』対策体内での水分の働き(提供:WEBライター・近藤 惣一郎)

発汗量と水分摂取量

ヒトの身体の水分量は1日の水分摂取(IN)と排泄(OUT)が等しくなることで一定量に調節されています。INは食事と飲料水および代謝水(体内で作られる水)、OUTは尿、便、汗、そして呼気から排泄される水分です。穏やかな環境で普通の生活をしている場合、体重70 kgの人で1日2.5LのINが必要で内1.2Lは飲料水として摂取する必要があります。

そして運動や作業、船上での沖釣りを含め、汗をかく生活をした場合、1.2Lに加え発汗量を追加の飲料水で補わなければなりません。スポーツの発汗は、種目によっては1時間に2Lに及ぶことがあります。沖釣りは一般的なスポーツに比べ運動量は少ないですが、船上という特殊な環境で半日〜1日行われ、カンカン照りや蒸し暑さが加わると、発汗量は想像以上に増加します。

個人差や釣行時の環境にもよりますが、夏の午前便の釣行なら発汗量は0.5〜1L、暑い日ならそれ以上にもなるはずです。睡眠時は水分が摂れていないので、ただでさえ脱水傾向にありますから、夏期の午前便なら船上には発汗予想分+1Lの水分、つまり 1.5〜2L(500ccのペットボトルなら3、4本)、沖あがりが正午を超えるようであればさらに追加の水分を持参すべきです。

侍Dr.近藤惣一郎のフィッシングクリニック:夏の沖釣り『熱中症』対策500ccのペットボトルなら3~4本が目安(提供:WEBライター・近藤 惣一郎)

午前便の釣行なら、真水、お茶、イオンウオーターなどを総計2Lほど、好みと状況を考慮して持参しよう。冷えていた方が吸収も早まるし、内面から火照りをクールダウンできます。食事が採れないときでも、発汗したら意識して塩分も補充しましょう。熱中症対策の飴も市販されています。

侍Dr.近藤惣一郎のフィッシングクリニック:夏の沖釣り『熱中症』対策熱中症予防に飴も効果的(提供:WEBライター・近藤 惣一郎)

発汗によってナトリウムも減少

多量の発汗によって脱水が体重の2%以上(体重50kgの方なら1kg)になると、立ちくらみや体のだるさ、イライラ感、頭痛を感じます。これは「脱水症」がもたらす「熱中症」のサイン。立ちくらみやクラクラ感、身体の火照りを感じた時点から飲み始めるようでは遅いのです。早めの対処を怠ると、誰でも虚脱感から意識障害といった重篤な状態に陥ります。

侍Dr.近藤惣一郎のフィッシングクリニック:夏の沖釣り『熱中症』対策脱水症状例(提供:WEBライター・近藤 惣一郎)

重要なことは汗で失われるのは水分だけではないということです。汗1Lあたり1g程のナトリウム・ミネラル(電解質)が含まれています。多量の発汗があるときガブガブと真水やお茶だけを摂取していると一見喉の渇きは癒されてもナトリウムの補給ができないまま体液が薄まり、ナトリウム濃度が正常より低下します。

脳はこれを感知して体液中のナトリウム濃度を正常化すべく尿量を増やして体内の水分を排除しようとしてしまいます。するとせっかく水分を採っても体液量が逆に減少して、本来の水のはたらきである体温調節(熱の運搬、蒸発による放熱)の他、栄養素や老廃物の運搬および内部環境を維持(体液の濃度、浸透圧の調整)することができなくなり、生命の危機に曝されるのです。これが水を飲んでいても脱水症に陥る「自発性c」というものです。

具体的な水分の摂り方

発汗量には個人差があるので、正しい水分の摂り方は「ノドの渇きに応じてこまめに飲む」となります。これが、最近ではもっとも正しいとされる自由飲水法です。釣り座周りにボトルを置くか、専用ケースで身につけて、喉の渇きを感じたら1回あたり50〜250mlほどを、まめに、ちょこちょこ飲みましょう(一度に300ml以上は飲まない)。トイレが近くなることを気にして飲まないことは危険です。

その際ナトリウム・ミネラルさらに糖分も含んだ体液組成に近いスポーツ飲料が有用になります。スポーツ飲料は 血液、体液のバランスを最適に補正するので、真水やお茶と違い、汗をかく環境では尿量を増やしません。しかし釣りの最中は、おにぎりやサンドイッチ、スナックなど食べ物も食べられます。十分な塩分や糖分を含んだ食べ物を食べているのにスポーツ飲料を無考慮に摂取すると、血液中の塩分濃度や血糖値が上昇し、更に喉が渇き、過剰な水分が必要になってしまいます。

熱中症予防の水分補給として、日本体育協会では、0.1~0.2%の食塩(ナトリウム40~80mg/100ml )と糖質(4〜8%)を含んだ飲料を推奨。自作なら1リットルの水にティースプーン半分の食塩(2g)と角砂糖数個を好みに応じて。糖を含んだ飲料が推奨される理由としては、腸管での水分吸収を促進することが挙げられます。

侍Dr.近藤惣一郎のフィッシングクリニック:夏の沖釣り『熱中症』対策具体的な水分補給(提供:WEBライター・近藤 惣一郎)

ですから釣りに集中してあまり食べない人はスポーツ飲料をメインにお茶や真水も予備に。逆に、こまめに食べる人は真水やお茶をメインに、発汗が多い時や船酔い・体調変化で食事がとりにくくなった時を想定してスポーツ飲料を予備に持って行くのが良いと思います。いずれにしても夏場は一人あたり総量2Lほど、500ccのペットボトルなら計3~4本、沖あがりが正午を超えるようであればさらに追加の水分を真水、お茶、イオンウオーターなど好みや状況を考慮して持参しましょう。

程度に冷えた飲物がオススメ

また 冷たい物はお腹が冷えて身体に悪いと思われがちですが、熱中症対策に適した飲物は5〜15℃。冷水は胃に留まる時間が短く、速やかに小腸に移動し、吸収されます。口もとから胃、腸を冷やせば深部から体がクールダウン、精神的、気分的にも爽快感が得られます。冷温を長時間保てるハイドレーションボトルや保冷機能が備わったボトルケースの活用をお勧めします。

侍Dr.近藤惣一郎のフィッシングクリニック:夏の沖釣り『熱中症』対策正しい水分補給で夏の釣りを楽しもう!(提供:WEBライター・近藤 惣一郎)

<近藤惣一郎/TSURINEWS・WEBライター>



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