ユーは何しに日本へ?:カダヤシ編 侵略的外来種ワースト100に選定

メダカにとても良く似たサカナ「カダヤシ」。可愛らしい見た目とは異なり、実は世界の侵略的外来種ワースト100に選ばれているって知ってましたか?

(アイキャッチ画像提供:小宮春平)

ユーは何しに日本へ?:カダヤシ編 侵略的外来種ワースト100に選定

メダカのニセモノ「カダヤシ」

皆さんはカダヤシというサカナをご存じですか?

見た目は私たち日本人がよく知るメダカに非常によく似ている小型のサカナです。

一般的には蚊の幼虫であるボウフラを捕食することから「蚊を絶やす→カダヤシ」が名前の由来になったされています。

その他にもカダヤシはタップミノーやアメリカメダカといった別名も持っています。

しかし、メダカによく似ているのは見た目だけで、その実態は世界中でも危険視され、現在は「世界の侵略的外来種ワースト100」及び「日本の侵略的外来種ワースト100」に選ばれる恐ろしい生き物なのです。

ユーは何しに日本へ?:カダヤシ編 侵略的外来種ワースト100に選定小さな体で大きな脅威(提供:小宮春平)

原産国はアメリカ

カダヤシもともとの北アメリカ中部を流れるミシシッピ川流域が原産と言われています。

ボウフラを捕食することに加え、水質浄化に役立つと言う理由で世界各地に導入されましたが、水質浄化などの効果には特に明確な根拠はなかったようです。

カダヤシは体が丈夫であることに加え、適応力の高さ、繁殖力の高さにより、現在は世界中の温帯、熱帯域で生息域を拡大しています。

日本での生息域拡大

日本に持ちこまれたカダヤシは、1913年にアメリカから、また1916年に台湾経由で持ちこまれたと言われています。

持ちこまれた当時は生息域は拡大していませんでしたが、東京から徳島へ移植された後に日本全国へ移植されました。

その後、1970年代から急激に分布域は広がり、2000年頃には福島県以南の各地で生存が確認され、2006年2月には外来生物法施行令により、特定外来生物として指定されました。

カダヤシ増加でメダカが減少?

現在は各地の池や河川、水田の用水路などでもごく当たり前のように発見することが出来るほどになりました。メダカだと思って捕獲したものがすべてカダヤシだったなんてこともザラで、近年のメダカ減少との原因の一つと考えられています。

カダヤシの食性は雑食ですが、肉食性がより強く、プランクトンや小型の水生昆虫、魚卵、稚魚などを好んで捕食します。そのため、たしかにボウフラを食べるというメリットはありますが、それ以上に他のサカナの卵を好んで食べてしまうため、他のサカナの繁殖を妨げるデメリットの方が目立ってしまいます。

またカダヤシは繁殖能力が非常に高く、2匹の親から最大300匹もの卵を産みます。

しかもその子供たちの成長スピードも早く、春に生まれたカダヤシは秋になれば次世代の産卵を可能にします。この繁殖能力は脅威としか言えないでしょう。

メダカとは全くの別種

外見はメダカに非常によく似ていますが、実はこの2種はまったくの別種です。

以前まではカダヤシとメダカは同じメダカ目に属していましたが、尾びれの形状、繁殖方法などの違いからメダカがダツ目に移動し、カダヤシの属するグループの名称はカダヤシ目に変わりました。

カダヤシ目には観賞魚で人気のグッピーやプラティ、ヨツメウオなどが属しているのに対し、メダカの属しているダツ目にはサンマやトビウオなどがいます。

カダヤシとメダカが似ていたとしても、グッピーとサンマで想像して比べると確かに両者がまったくの他人であることも理解できますね。

ユーは何しに日本へ?:カダヤシ編 侵略的外来種ワースト100に選定シルエットが良く似ているグッピー(出典:PhotoAC)

メダカとカダヤシの見分け方

カダヤシとメダカは非常によく似ていますが、ポイントさえ押さえれば、しっかりと判別することが出来ます。姿かたち、色まで良く似ている両者の決定的な違いは、体の後ろ半分にある尻ビレと尾ビレにあります。

まず尻ビレについてですが、カダヤシの尻びれはメスは縦長で小さく、オスの尻ビレは交尾器も兼ねているため細長い形状をしています。それに対し、メダカの尻ビレはオス・メスともに横長で四角く台形のような形状をしています。

また、尾ビレについては形状は明確に異なり、カダヤシの尾ビレは丸みを帯びているのに対し、メダカの尾ビレは角ばった形状をしています。

その他にも全体的なシルエットで見たときに、丸くふっくらしているのがカダヤシ、細長くスラっとしているのがメダカですが、こちらは栄養状況によっても変わるので、各ヒレの形状で判断するのがいいでしょう。

ユーは何しに日本へ?:カダヤシ編 侵略的外来種ワースト100に選定メダカ(出典:PhotoAC)

メスだけでも繁殖できる理由

カダヤシは多くのサカナの産卵方法とは違い、卵胎生という繁殖方法を行います。

基本的に魚類の繁殖方法は決まって卵、つまり卵生になりますが、カダヤシは卵を産み落とすのではなく、親となるメスのお腹の中で卵をふ化させ、子供を産み落とします。繁殖期は長く、冬以外なら常に繁殖することが出来るうえ、一度に100匹以上、多い時には300匹も産卵することが出来ます。

これだけでもすさまじい繁殖力だとお分かりいただけると思いますが、他にもカダヤシのメスはすごい能力を持っています。

メスは交尾によって得た精子を蓄えることができ、何らかの形で違う環境に移されても1匹で新たに繁殖をすることが出来るのです。カダヤシが「世界の侵略的外来種ワースト100」に選ばれるのも納得できますね。

カダヤシは特定外来生物

前述のとおり、カダヤシは特定外来生物に認定されており、飼育や放流が固く禁止されています。そのため、川遊びなどでメダカだと思って捕獲し飼育してしまうと、最悪の場合、懲役1年以下もしくは100万円以下の罰金の対象となってします。

さらに、捕まえて持ち帰ったサカナがカダヤシだと判り、近所の池に放流してしまうと、懲役3年以下もしくは300万円以下の罰金の対象になってしまいます。

もし万が一、カダヤシを捕まえて持ち帰ってしまった場合は、残酷ですが必ず殺処分するようにしてください。

「こんな小さなサカナでは何も変わらない」と、思う人もいるかもしれませんが、前述のようにカダヤシは適応能力が高いうえ、1匹でも繁殖することが出来ます。世界の数えきれない生き物の中でもワースト100に選ばれたその繁殖力を軽視してはいけません。

川遊びでサカナを持ち帰る際はヒレの形をしっかりと観察し、メダカだけを持ち帰るようにしてください。

<近藤 俊/TSURINEWS・サカナ研究所>



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