侍Dr.近藤惣一郎のフィッシングクリニック【着込み過ぎ雪だるま病】

問診票

私は寒がりで、冬は沢山ウェアを着込んで行かないと釣りができません。先日は雪だるまのように着込み過ぎ、動きにくくなり、肝心の釣りが楽しめませんでした。おまけに日が昇ってからは暑くなって沢山汗をかき、そのあと身体が冷やしてしまい風邪まで引いてしまいました。先生はどのようにしてアクティブに冬の釣りを楽しんでいますか。ウェアの工夫教えてください。

(アイキャッチ画像提供:WEBライター・近藤 惣一郎)

侍Dr.近藤惣一郎のフィッシングクリニック【着込み過ぎ雪だるま病】

診断結果:着込み過ぎ雪だるま病

今年も寒い冬がやってきましたね。厳しい冬こそ、海に出て、心も身体も鍛えましょう!沖釣りは思った以上に体を動かします。いや、動いてよりスポーティーなものに高めることこそ、私が提案する健康で格好良いフィッシング!

防寒は、分厚いウェアやグローブで重装備することではありません。正しい防寒の知識を持ち実践することで、体の負担を減らし、釣りを安全に、健康的に行えるだけでなく、良い釣果にも結びつきます。

今回は良好な保温、防湿、運動性を意図した防寒ウェアの「機能的レイヤリング(重ね着)」を紹介しましょう!

処方箋

【賢い重ね着=「機能的レイヤリング」】

侍Dr.近藤惣一郎のフィッシングクリニック【着込み過ぎ雪だるま病】レイヤリングが重要(提供:WEBライター・近藤 惣一郎)

寒さ対策と発汗対策防寒ウェアを考えるとき、一番外側に着るアウターに注目されがちです。しかし冬であっても人は常に身体から熱を発し汗をかきます。一言で冬と言っても、場所やその日の天候、気圧配置によっては、暖かい日もあります。衣類の選択を誤り着込み過ぎると、自由が奪われ、視界が狭まり、頚や肩の血行も悪化、肩こりや頭痛、船酔の原因にもつながります。

また体温が上がり無駄に発汗量が増え衣類が濡れてしまうことで、それが蒸発する際、身体から熱を奪い、身体が冷え体力を消耗させる原因になります。これらは釣りの集中力を失うだけでなく、風邪など体調を崩すきっかけにもなるのです。

防寒対策は外側からの寒さ対策に加え、内側からの「発汗対策」が大切になり、賢い重ね着=「機能的レイヤリング」の知識、実践が重要になるのです。

しぶきや風雨、直射日光を遮るアウター、肌に直接触れるアンダー、両者の間に入るミドラーの役割、意味を十分理解し、シューズやグローブを含め、最適なウェアの選択、コーディネートは、快適に集中力を保ち、良い釣りを行うため、更には倦怠感や筋肉痛を翌日以降も残さず、手や指、脚を傷めることなく身体を健康に保つ上でも非常に重要になるはずです。

アウターに要求されるのは確実な撥水・防水・透湿機能

「防寒には分厚いアウターが不可欠!」と安易に考えがちですが、アウターに要求すべきは中綿入りで分厚いことよりも、確実な防風・撥水(水をはじく)・防水(水を通さない)機能、そして透湿機能(蒸れを外に逃がす)です。

ベテランや漁師さんが愛用するポリ塩化ビニル防水生地(PVC)素材の”カッパ“は海水や汚れが染み込まず、手入れが簡単でヘビーユーザーには愛用されますが、透湿機能に劣り、発汗対策には劣ります。ミドラーを多くして着用すれば良いのですが、暑がり、汗かきの方には適しません。

アンダーの役目は汗の吸収と拡散、筋肉や関節のサポート

侍Dr.近藤惣一郎のフィッシングクリニック【着込み過ぎ雪だるま病】アンダーウェア(提供:WEBライター・近藤 惣一郎)

アンダーで重要なのは素材。綿は肌触りが良く、適度な保温性があります。しかし汗や水に濡れるとなかなか乾きません。

発汗→蒸れによる不快感→気化熱が奪われ→急激な冷え・体温低下→体力消耗という悪循環に陥ります。発汗する環境に優れる素材は軽くて吸湿性・速乾性に優れるポリエステルです。

吸った汗を拡散し蒸れも防ぎ、直ぐ乾くため体を冷やしにくいのです。さらに肌から蒸発した水蒸気が水になるとき、水蒸気のエネルギーが熱になり身体を温めます。

ポリエステル素材のアンダーがぴったり肌に密着していればいるほど発熱効果を実感しやすくなります。また揺れる船上では、体幹、腕や脚に複雑な負荷や衝撃がかかります。

近年、着用時部位別、段階的に筋肉や血管にかかる圧力を調整した加圧アンダー(コンプレッションアンダー)が各スポーツで活用されています。これは筋肉のポンプ作用を高め血行を促進、身体にかかる負荷や衝撃を和らげ、捻挫など怪我の予防、疲労を貯めない効果があります。

ただし長時間の釣行であまり締め付けがきついものを着用するとそれ自体が肩こりや倦怠感を招きます。サイズは余裕のあるものを選ぶといいでしょう。

ミドラーの厚さ・枚数で温度調整を

侍Dr.近藤惣一郎のフィッシングクリニック【着込み過ぎ雪だるま病】快適な釣りを(提供:WEBライター・近藤 惣一郎)

ミドラーはサーマルレイヤー(保温層)と呼ばれるように、体温やアンダーウェアの吸湿発熱で得た暖かい空気をため込み、さらに冷たい外気を遮断する役目を担います。

私が冬の釣りでとても気を遣っているのはこのミドラーの厚みと枚数です。極端なことを言えば、アウター、アンダーは年中同じでも、ミドラーを季節・気候に応じ正しく選択することが重要です。

素材は、ポリエステルがベスト。冬と言っても、場所やその日の天候、気圧配置によって、厳しい寒さもあればすこし暖かな日もあります。

最近の気象予報はとても正確なってきています。時間別の気温、雲の量、雨の状態、風力、風向きを前日に把握して、最適なミドラーの厚み、枚数を決めます。たとえば晴れの日や南風の時は暖かいので薄め、北風や雲が多く日照が少ない日は寒いはずなので厚めのようにです。

ただし、予備のミドラーも持参して、最終的には、当日朝、現地のコンビニや港に着いて、風の強さや気温を体感し、ウェアの枚数を減らしたり、逆に予備に持っていったウェアを追加着用しましょう。

私自身、冬でも中綿が分厚いアウターではなく、オールシーズン用のゴアテックス・アウターを着用し、ミドラーの厚さ・枚数で快適な環境を作り出しています。中綿入りのアウターは勿論保温性に優れますから、それに慣れ、愛用している方は、ミドラーの選択を分厚すぎないライトなタイプにして、蒸れを防ぎ、動きやすさ、機動性を保ちましょう。

その他のアイテム

使い捨てカイロはとても役立ちます。血流量の多い太ももや背中、腰部の筋肉に貼るだけで、温まった血液が全身に運ばれ体温は上がります。それによりミドラーの枚数を減らすことが出来、動きやすさは勿論、着込み過ぎによる発汗・蒸れを抑え、快適な釣りを行えることに繋がります。

侍Dr.近藤惣一郎のフィッシングクリニック【着込み過ぎ雪だるま病】カイロは有効(提供:WEBライター・近藤 惣一郎)

また、血流量の多い頸部や耳をネックウオーマーで被うだけで、全身が温かくなります。外部からの冷たい空気の流入を防ぐだけでなく、ウェア内の保温層に蓄えた温かい空気を逃がさない役目もあります。

侍Dr.近藤惣一郎のフィッシングクリニック【着込み過ぎ雪だるま病】ネックウォーマーも忘れずに(提供:WEBライター・近藤惣一郎)

手指の保温も大切ですが、分厚く指先を被ってしまう防寒グローブは、細かな作業を行う釣りには不向きです。冬でも最低3本指先が開いたもの、そして濡れても拭いたら水分が直ぐに除ける素材のものが良いでしょう。私はチタン入りクロロプレンゴム製ストレッチグローブを愛用しています。

侍Dr.近藤惣一郎のフィッシングクリニック【着込み過ぎ雪だるま病】グローブ(提供:WEBライター・近藤惣一郎)

また寒さや暑さの感じ方は、人によって違いがあり、俗にいう「暑がり」や「寒がり」が存在します。見分け方は「汗かき」か否か。運動や食事、精神的な動揺で、汗をかきやすい人は暑がりです。この発汗しやすい暑がりの人ほど正しいミドラーの選択が重要になります。

自分の体質を知った上で、当日の気候を考慮して、賢く防寒対策 して冬の釣りを楽しみましょう!

侍Dr.近藤惣一郎のフィッシングクリニック【着込み過ぎ雪だるま病】ふくらはぎや足にも(提供:WEBライター・近藤 惣一郎)

<近藤 惣一郎/TSURINEWS・WEBライター>



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