京都の年越しそばと言えば「ニシンそば」が有名です。縁起物とされる「ニシン」ですが、皆さんは「ニシン」がどんな姿をしてどのような生態を持ったサカナかご存じでしょうか?今回はニシンの生態ついてとなぜ縁起物として扱われているのかを調べてみました。
(アイキャッチ画像提供:TSURINEWS編集部)
ニシンとはどんなサカナか
銀色の体と、イワシのような顔をしているニシンは分類学的には、動物界>脊索動物門>脊椎動物亜門>条鰭綱>ニシン目>ニシン科>ニシン属>ニシンと分類されます。
イワシは動物界>脊索動物門>脊椎動物亜門>条鰭綱>ニシン目>ニシン亜目に分類され、近い種類のサカナになります。どうりで似ているわけですね。
ニシンは、冷水域を好む回遊魚で日本では関東以北のエリアに生息しています。生息する南限は日本海で富山県、太平洋側で犬吠埼付近とされています。
ニシンの卵は数の子
ここまでの情報では、ニシンというサカナがまだあまりピンと着ていない人もいると思いますが、ニシンの子どもの名前を聞けば「あ~」と皆さんも納得できるかと思います。
実は、ニシンの子どもはお正月のおせちに欠かせない「数の子」の親なのです。
なぜニシンは縁起がいいのか
ニシンがなぜ縁起がいいのかいうと、ニシンを漢字で表すと【鯡】や【鰊】と表されることが多いのですが、【二親】と表現させることもあります。
このニシンは、多くの子どもが生まれるよう願った縁起物の魚とされています。かずのこを見てもわかる通り、非常に多くの子供が生まれます。
『二親(二人の親)から多くの子どもが生まれるように』
『子孫繁栄や子宝に恵まれるように』
という願いが込められたサカナなのです。
そのため、ニシンは縁起が良く、その子どものかずのこも「二親健在」といった理由から縁起物とされ、どちらもおせちには欠かせない食材となっています。
京都の年越しそばと言えば「ニシンそば」
お正月のおせちとして、かけそばの上にニシンの甘露煮がのった京都が発祥とされている「ニシンそば」が有名です。
このニシンそばの歴史は意外と古く、明治初期にまでさかのぼります。
物流の少ない時代、四方を山に囲まれた京都では、新鮮な海の幸を食べることがかなり難しく、朝廷への貢物も干魚類がほとんどでした。
干魚類の代表例は『ニシン』や『タラ』で、町衆もこれらの干魚類をタンパク源として好んで食べていたそうです。
そんな中、【松葉】という蕎麦屋の二代目松野与三吉により『ニシン』と『そば』を組み合わせた『ニシンそば』を開発し売出したところ、一大ブームとなり、今では京都を代表する年越しの料理となったそうです。
ニシンは世界一臭い食べ物にも
ニシンを見ても、かずのこを見ても縁起がいいとされる両者ですが、海外からやってくるニシンは私たちにとって、もしかしたらゲキブツかもしれません。
皆さんは、「シュールストレミング」という缶詰をご存じでしょうか。
よくテレビなどで罰ゲームに使われる『ニシンの塩漬けの缶詰』です。世界一臭い食べ物と聞けば分かる人もいるかもしれません。主にスウェーデンで生産されるこの缶詰は、現地の伝統的な食品として地位を確立しています。
今ではネタとして扱われることの多いこの食材ですが、なぜ生まれたのでしょうか?
過酷な冬を乗り切るための保存食
スウェーデンの土地はあまり農業に適しておらず、冬のたんぱく源を確保することが難しいとされていました。
そこで夏に捕れたニシンを保存食とする文化が生まれたのですが、製塩に適した環境でもなかったため「塩漬け」と言っても塩そのものに漬けるのではなく、塩を節約するため、比較的濃度が低い塩水に漬ける方法でしか保存できませんでした。
そのため、漬けておいたニシンの発酵は止められず、強烈なにおいを放つこととなります。しかしそれでも貴重な食糧であり、冬のたんぱく源だったため、スウェーデンの方に、このシュールストレミングは好まれて食べられています。
正月にはぜひニシンを
ニシンはゲン担ぎだけではなく、実際に栄養も豊富なため、正月休みに英気を養うことにも向いているでしょう。
ニシンやかずのこを食べて、そして勇気のある方はシュールストレミングを食べて、素敵なお正月をお過ごしください。
ではみなさま、良いお年を。
<近藤 俊/サカナ研究所>
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