「麦わらタコに祭りハモ」といわれるように、マダコは麦の収穫のころ、ハモは夏祭りのころがおいしい魚です。今回は、関西では特にこの時期なじみ深いマダコとハモの目利きを、奈良県中央卸売市場の丸中水産株式会社勤務の著者が紹介します。
(アイキャッチ画像作成:TSURINEWS編集部)
明石のマダコ
マダコといえば、特に有名なのが明石のタコ。立って歩くともいわれるが火星人のように立っては歩かない。ただしどんな狭い隙間もすり抜ける。発泡の箱なら簡単に開けて脱走するし、船のイケスから逃げるものも多い。
今問題となっているのは、先年テレビでも報道された主にマイボートによる釣りである。漁業権を知らなかったり、禁漁区での釣りは犯罪である。カンタマ、高倉瀬を含む鹿の瀬に設定されている漁業権は、組合員以外回遊性の魚(ブリ、タイなど)を含めたすべての釣りができないので、注意したい。紀淡海峡・加太も同様に漁業権が設定されている場所が多い。
産地による味の違い
前置きはさておき、そろそろ本題に入りたい。おいしいマダコを判断する方法だ。
とはいえ、タコの目利きはなかなか難しく、鮮魚店などで活きているタコを買うなら、産地で判断するしかない。明石が一番。足が切れていても明石がおいしい。そこに香川、岡山と瀬戸内が続く(「三八冷害の時、明石ダコが激減して熊本産を放流し味が微妙にかわった」という漁師もいる)。関東なら江戸前が一番という人も多い。
なぜ産地によって味が違うのか?それは住んでいる場所が岩場かゴロタ場か、また潮の速さで、味がかわるからだ。川のような流れの明石海峡ではタコも流されまいと必死に底の石に抱き着くので足が太く、豊富なベントス(底生生物)がブランドを造っている。
茹で方での味の違い
そして、ゆで方や塩加減でも味はかわる。釣り人なら分かると思うが、タコの腕の力はかなり強い。つまり全身筋肉のようなもので、そのまま加熱すると硬くなる。なので、まずこの筋肉をたたいて軟らかくする。塩もみは汚れ、ぬめりを取るとともに、この筋肉を軟らかくする工程だ。湯がく時は番茶、大根の葉、米のとぎ汁で茹でて臭みを取ったり、紅茶で色をだしたり工夫も多い。ミョウバンを使うと色が出る。
皮の色艶と硬さで判断
だが普通スーパーでは生のタコを常時見ることは少ない。湯がかれた状態で置かれているほうが一般的だ。そんな茹でダコには、アフリカから冷凍輸入されたものを国内で湯がいたものと、国産の冷凍タコを湯がいたもの、国産の生タコを湯がいたものがある。軟らかさもこの順番で硬くなる。
右側がモーリタニア産の湯がいたタコ、左は香川産の生タコを湯がいたもの。ほとんどのタコが生食用にパックされているが、上から少し押さえてみる。この時硬すぎるものは避ける。また古くなると皮の色に艶がなくなる。
最近の若い奥様は活けダコを湯がいたものより、アフリカ産の冷凍ものを湯がいたもののほうが軟らかくて好きらしい。でもこのアフリカ産も資源枯渇で値段は高くなっている(今年はあまり高すぎて在庫過多になり、少し下がった)。マダコのピンチヒッターのヤナギダコは味が落ちる。
下敷きの吸水紙もチェック
またほとんどのパックされている魚介類共通で、下に敷いてある吸水紙が汚れていない物を買う。時間とともにドリップが出て吸水紙が汚れるからだ。特に解凍ものは顕著に見られる。
水ダコもよく売られている。これは北海道から活かったまま足のみ空輸されてくる。たたけば色がかわるものもある。刺し身用として売られているが、バーナーで炙るタタキもおいしい。薄くスライスしてポン酢で食べる。
本種は世界最大のタコで30kgくらいにまでなる。水タコの旬も夏。ただし年中、味はそんなにかわらない。北海道が主な漁場なだけに夏場の方が漁獲が多いからだけかもしれない。
冬が旬のイイダコは、金色の輪紋がはっきりしたものほど新鮮。フィリピンからの冷凍輸入もあるが、おでんに入れてもやはり瀬戸内産のほうが歯ごたえ、甘みも多い。もちろんイイ(卵)が入っているほうがイイ。
タコといえば明石焼き
タコと言えば明石焼。口に入れた瞬間にいっぱいに広がるフワリとした軟らかさ、その中にぽつんとピンク色。舌で転がしこれを甘噛みした時の歯ごたえ。漏れるおつゆ。こんな乳房を持つ女性に巡り合いたい。中のタコがアフリカ産なら歯ごたえもおつゆも少ない。
なお、卵に小麦粉が明石焼と本サイトに書いてあったが、これだとフワリ感に欠ける。ジン粉を使うのが秘訣で、比率は店毎に違う。生地にジン粉を半分以上使うと軟らかすぎてひっくり返せない。メリケン生地にジン粉三分の一くらいを基準に出汁やマヨネーズを入れるのが我が家流だ。
ハモ
京都の祇園祭や大阪天神祭り(すでに終わったが)の季節に旬を迎えるのがハモ。産卵を控え栄養を蓄える祭り前後が旬。しかし祭り中はとにかく値段が高い。時期を少しずらして購入するのがお得である。
京阪神ではなじみの魚だが、北日本では食べたことがない人もいるから驚く。小骨が多いので骨切をしなければ食べられない。皮を残しプロは3cm(1寸)を24に切るといわれている。湯引きにした時の小骨のシャリシャリは口の中で踊るような感じがする。
このハモ、狙って釣ることはないが、タチウオのテンヤ釣りで釣れたことがある。歯が鋭くタチウオより暴れるので危険な魚のひとつだ。漁業では、はえ縄、底引き網、カゴで漁獲される。一昔前は以西底引き網でも多く漁獲され、脂の乗ったハモがトロールのハモ、略してトロハモといって入荷していた。
身の色で判断
開いて骨切したハモを購入する時は、身が白くて透明感があるもの。アラからいい出汁がでるので、できればアラが付いているものを購入することをオススメする。パックに活け〆とか湯引き用と書いてあるもののほうが鮮度がいい。和歌山、徳島、山口、大分など西日本各地から入荷する。
輸入は韓国、中国から生きた状態で入荷する。生命力が強いので長旅でも元気だ。昔、京都まで生きたまま運ばれていたのもうなずける。
また開きになって冷凍されたものも輸入され、照り焼きや天ぷらに加工される。店に来られた海外のお客さんに魚を知らない通訳のおねえさんがイール(うなぎ類)と説明していたが、英名はパイクコンガー。ハモもアナゴも一括りにするのは海外の文化で、日本の食文化はきちんと分ける(※クロアナゴのことをハモと呼ぶ地方もある)。
活けのハモは500~900gが狙い目
活けのハモが店頭に並んでいれば、骨切できるプロがいる鮮魚店、スーパーだろう。こういう店はハモ以外の品物もこだわりがあったり他にない品物があることが多い。購入するなら500から900gまでで身が硬直していない淡路産が最高。沼島や岩屋が産地だ。あまり大きすぎると皮が硬い。手に持つとダランと力が入っていないのが活けもの。
ただしお腹が異常に膨らんだものは「エサ食い」といってエサがパンパンに詰まっていることがある。これは避けるべきで、お腹を割ると消化しかかったイカやイワシが出てくる。もちろん匂うし、このお腹の匂いが身にも移っている。
ハモの様々な調理法
ハモは練り物にもなるので、その工程で出たハモの皮が焼かれて刻まれて売られている。これは酢の物に最適で、時短調理うれしい食材だ。
この他、テリヤキ、天ぷら、ハモスキ、アヒージョ、皮ときゅうりの和え物、肝も白子もおいしい。見た目がヘビのようだから敬遠する女性が多いものの、コンドロイチンやビタミンAといった美容と健康に必須な栄養素を多く含む。
なぜこの時期にハモかというと、これから土瓶蒸しがおいしくなる。国産マツタケにハモは高級料理屋になくてはならない。「私など輸入マツタケも口にできない」というと、「釣りに行くのを1回我慢すれば、輸入マツタケくらいは買えるだろう」という声が聞こえてきそうだ。
<有吉紀朗/TSURINEWS・WEBライター>
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