日本の自然環境を蝕む「第三の外来種」問題 問われる飼育者のモラル

外来種問題が徐々に浸透していっている昨今ですが、現在また「新しい外来種」の悪影響が懸念されるようになっています。

(アイキャッチ画像提供:PhotoAC)

日本の自然環境を蝕む「第三の外来種」問題 問われる飼育者のモラル

「改良メダカ」が野外で確認

岐阜県各務原市にある、淡水魚専門の水族館・世界淡水魚園水族館「アクア・トトぎふ」は、県内の野外水域に放流された観賞魚メダカの記録が先月、研究成果として公開され、論文にも掲載されたと発表しました。

日本の自然環境を蝕む「第三の外来種」問題 問われる飼育者のモラル美しい鑑賞メダカ(提供:PhotoAC)

調査では、同県美濃市において採集されたメダカ類の形態的特徴を観察。その結果、一部の個体が鑑賞メダカとして人気の高い「幹之メダカ」であることが特定されたのだそうです。

鑑賞メダカの野外での確認は、岐阜県では初めてだといいます。そして今回確認された個体は、人為的に放流されたものと考えられています。(『「第
3 の外来種」観賞魚メダカの初記録』アクア・トトぎふプレスリリース 2022.8.1)

どのような危険があるのか

実は近年、この鑑賞メダカのような「人工改良品種」による在来生物への悪影響が懸念されています。我が国で古くから人気の高い金魚、錦鯉、そして今回のメダカなどがそれにあたるでしょう。

そもそも金魚はフナ、錦鯉はコイという在来種を人工的に改良して作られた観賞魚。そのため遺伝子的に近い存在で、もし自然環境下に放されてしまえば、在来の魚たちと交配してしまう可能性が高いです。

日本の自然環境を蝕む「第三の外来種」問題 問われる飼育者のモラル金魚も自然環境下では有害になりうる(提供:PhotoAC)

そしてその結果、放流された地域にもともといた在来個体に本来ないはずの形質がもたらされてしまったり、地域の個体群が遺伝子汚染されてしまうリスクがあるのです。

「第三の外来種」問題

これらの改良品種が自然環境下で確認された場合、そのほとんどが人為的な放流によるものと考えられます。

例えば金魚は「金魚すくい」などで安価・安易にとりひきされることもあり、生態系などに対するリテラシーのない人が、罪の意識なく河川などに放流させる例があります。またより悪質なものでは、養殖業者が見た目のすぐれない個体を用水路などに大量廃棄してしまうこともあるようです。

錦鯉は長生きで大きくなることもあり、ペットとして飼育が続けられなくなってしまった結果、自然環境下に放流されてしまうことがあるようです。

日本の自然環境を蝕む「第三の外来種」問題 問われる飼育者のモラル錦鯉を野外で見かける機会も増えた(提供:PhotoAC)

このようなことが起こると、放流された水域の在来種に深刻な影響を及ぼす可能性があります。またそうならなくとも、派手な見た目に改良された魚たちは自然界では目立つため、生き残れる可能性は極めて低く、誰も幸せにならない行為だといえます。

このように、人工改良された観賞魚が環境に悪影響をもたらす例が近年目立っており、国外外来種、国内外来種につぐ「第三の外来種」と呼んで警戒を強めている人たちもいます。

いずれにしても、飼育個体を安易に環境に放してはいけないということは、今後もより強く啓蒙されていくべきだと言えるでしょう。

<脇本 哲朗/サカナ研究所>

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