いまや養殖魚の中で最もポピュラーなもののひとつ・ブリ。そんな食卓に欠かせない養殖ブリですが、今年の夏は異常な高騰が続きました。
(アイキャッチ画像提供:PhotoAC)
養殖ブリの価格が高騰?
刺身から惣菜まで、様々な形で食卓を賑わす養殖ブリ。そんな我々の暮らしに欠かせない養殖ブリの価格がこの夏高騰し、市場を騒がせました。
一般的に養殖ブリの供給量は、消費量が多い冬場に増え、夏場にはやや減る傾向があります。そのためそもそも例年夏には相場が上がるものだといえますが、それでも今年の高騰ぶりは異様だったといいます。
7月中旬には、豊洲市場の卸価格で、1kgあたり1,500円目前にまで上昇したのですが、これはブリの養殖事業がスタートし、天然物よりも高価であった頃のような高値なのだそうです。
高騰した理由
養殖ブリの多くは、春に漁獲した「モジャコ」と呼ばれる稚魚をイケスで養殖し、翌年の秋以降に出荷するという流れになっています。そのためこのモジャコの水揚げ量が少ないとその値段が上がってしまい、結果として翌年の養殖ブリの原価が高まってしまうのです。
昨年はモジャコの回遊時期が例年よりずれたことが関係し、結果的に記録的な不漁に終わっています。
加えて近年養殖ブリは国外でも評価が高く、輸出が増えている状態です。ここのところの円安の影響もあり、国内への供給量が下がっていることも、価格の高騰につながったと見られています。
価格高騰の切り札は「人工種苗」
このように、養殖ブリの価格が、天然資源であるモジャコの漁獲量によって左右されてしまうことは長い間業界の懸念事項とされてきました。そこでいま、解決策となろのではないかと期待されているのが人工種苗モジャコです。
これは親魚から採卵して孵化させたモジャコで、天然資源に影響を与えず環境負荷が少ないことや、好きな時期に養殖をスタートすることができる(=供給が少なく需要が高い時期に合わせて成魚を生産できる)といった利点があります。
加えて稚魚から親魚になるまでの履歴が確認できる、選抜育種ができるなど、天然種苗と比べるとメリットが大きく、今とても注目されているのです。
しかし、人工種苗モジャコの生産量は現在年間200万匹程度。天然種苗の供給量が年間2000万~2500万匹であることと比べると圧倒的に少ない状況です。
この現状や今後の需要増を見据え、養殖ブリ生産量日本一の鹿児島県は、2018年に種苗生産施設を新設しています。今後この人工種苗の生産量が増えていくにつれて、こちらが主流となっていくかもしれません。
<脇本 哲朗/サカナ研究所>
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