新しい釣り場を開拓しようと、和歌山県の水軒一文字に初めて挑んだ。慣れない釣り場で悪戦苦闘の繰り返しの末に、4度目の釣行でようやくこの地域の名物の平鯵(ひらあじ)3匹を手中にした、へっぽこ釣り師の釣行記を綴らせていただきたい。
(アイキャッチ画像提供:TSURINEWSライター伴野慶幸)
水軒一文字でカゴ釣り
水軒一文字に釣行を決めたものの、案外情報は出回っていない。そこでまずは水軒一文字に渡す水軒渡船のホームページを熟読し、釣行ルート、出船ダイヤ、注意事項を中心に確認する。始発便は深夜未明の3時40分なので、余裕をもって前日深夜に自宅を出発し、釣行日のタイミングで24時間営業を行っている和歌山県内の釣りエサ店のマルニシ本店(和歌山県和歌山市湊3001)に立ち寄って、エサを購入するついでに水軒一文字の情報を聞いた。
幸いにも経験豊富なスタッフから「カゴ釣りは可能な限り遠投、タナは底近く。名人を見つけてその人の近くで見本を見せてもらうといい」とアドバイスを受けることができた。実はこの「カゴ釣りは可能な限り遠投」の意味を後に実感し、悪戦苦闘することになるのだが……。
駐車場と始発便
水軒渡船の駐車場には深夜1時半ごろに到着。始発便まで車内で仮眠したのだが、これが失敗。目覚めた3時前には駐車場は満車寸前となり、始発便の乗船受付は早くも終了。始発便は3時発に繰り上げ出船となっていた。早々と駐車場入りしていたのに出鼻をくじかれ、仕方なく折り返しの2番船の列に回る。
始発便に乗りそびれた釣り人の一部が現場を仕切る「おかみさん」に文句を言うも、救済措置は一切なし。ここはおかみさんが法律、これぞ郷に入れば郷に従えだと納得し、今日は釣果よりも勉強の場だと、待ち時間を利用して、おかみさんから水軒渡船ならではのルールなどを教わることにした。
遠投が大事
初釣行の5月3日は新波止で、6月11日は旧波止で、地元名物:平鯵(ひらあじ)狙いでカゴ釣りに挑んだが、2回連続丸ボウズに終わった。事前の情報収集に努めたものの、慣れない釣り場ゆえに現地でしか分からないことが生じての惨敗だった。釣り座選びとタナの設定はさて置くとしても、痛感したのはマルニシで受けたアドバイス「カゴ釣りは可能な限り遠投」の難しさだ。
神戸の沖波止で身につけた30m級の遠投ウキサビキでの技では追い付かない、最低40m級の「遠投」でないと、魚の回遊層に届かないのだ。これは一筋縄ではいかないと、対策を講じての出直しを余儀なくされた。
7月2日は新波止で初の平鯵
7月2日は対策として、まきエサカゴを1サイズ小さくして、クッションゴムをテンビンの先ではなく上に付け方を変えて、張力を利かせる工夫を施してのリベンジ釣行を試みた。
当日は天候が不安定なこともあって釣り人は少なめで、始発便は定刻の3時40分に出船。おかみさんから聞いた新波止4番の船着場で降りて釣り座を構え、ウキ下6ヒロのタナに設定し、超遠投を意識して仕掛けを投げ入れる。
すると幸運にも、夜明けのタイミング3投目でククッという竿先の感触を得てのヒット。慎重に巻き上げてそろりと抜き上げると、待望の平鯵が波止上に初めてお目見えとなった。サイズは30cm級の見事なサイズのマアジ。大阪湾のいわゆるデカアジのレギュラーサイズよりも一回り大きい。
これが釣りたかったのだと感激に浸るも、よかったのはここまで。その後は東側の3番付近に釣り座を構えた釣り人たちの独壇場となり、私も私の両隣の釣り人も置いてけぼり状態。「向こう(3番付近)でサバ釣れてるで。タナ上げてみたらどうや」との常連からのアドバイスも実らずにジ・エンド。釣果は平鯵1匹の貧果に終わってしまった。
7月17日に4度目の釣行
どうしても大きな平鯵の数釣りがしたいと、捲土重来、7月17日に4度目の釣行に挑んだ。
当日は大勢の釣り人が早々と訪れ、2時過ぎから早々とおかみさんの仕切りによるコロナ対策の検温がスタート。駐車場は2時40分過ぎに入口封鎖され来場打ち止め。勝手のわからない一見の釣り人達が乗船手続きにまごついてひと悶着が生じる一幕があったが、私は過去の釣行で渡船の公式ルールも暗黙のルールもインプット済なので、スムーズに一連の手続きを済ませ、3時の繰り上げ始発便に乗船することができた。
時合いは短いので、乗船手続きの時に9時迎えの臨時便での引き上げもおかみさんに申し込んでおいた。なお、早めの臨時便引き上げを希望する場合は、乗船手続きの際に申し込んでおく必要があるので注意のこと。
遠投カゴ釣りのタックル
当日のタックルは磯竿5.4mの遠投5号に、ミチイト3号のスピニングリール、鉛入りの遠投棒ウキ10号にクッションゴム、中通しパイプテンビンにハリス3号を長めにとってのチヌバリ2本バリ仕掛けをセッティング。夜明け前の集魚効果を狙って、ハリスの上のほうにケミホタル50のブルーを付ける。まきエサカゴは小さめのサイズとしたかわりに、オモリは8号にして、空気抵抗を減らしつつ重量感を持たせる組み合わせとした。
参考までに常連達のスタンダードなタックルを紹介すると、磯竿4号にロケット羽ウキ、金属製の細身のテンビンに、遠投専用カゴオモリという組み合わせが多いようだ。
さしエサはオキアミ、まきエサはアミエビ主体で少量のオキアミを混ぜ、超遠投にも堪えるようカゴにはきつめに押し固めて詰める工夫を施した。
平鯵が2連発
船着場は悩んだ末に前回と同じ新波止の4番を選択し、やや3番寄りの場所に釣り座を構えた。ウキ下6ヒロ半に設定して、3時半ごろから釣り始めたが、自分も周りも釣れない時間が続く。
過去3回の釣行でも釣れ始めたのは夜明け前後からだったので、焦らず気負わずの心持ちで続けていると、向かい風が徐々に弱まってきた。その分暑さも増して体力勝負の様相を呈してきたが、課題だった超遠投が心持ち上手くいくようになった。
すると夜が明けつつある4時半過ぎに、スッとウキが沈み、竿先に張りが伝わってきた。クンクンと心地良い魚の反応を感じながら慎重に寄せてくると、海面に大きな白い魚体が現れた。そろりと波止上に抜き上げたのは、29cmの平鯵だ。幸先良いスタートにニンマリ。
しかし、ここから更に釣果を積み重ねることができるかが本当の勝負。周りの釣り人も平鯵を手にし始めて、今が時合いだと、エサ付けとカゴへのまきエサの詰め込みを丁寧に行いつつも、手早い手返しの繰り返しを心がける。
すると5時過ぎに再びウキがスッと沈んだ。常連のタックルとは違う私のこだわり、独自の中通しパイプテンビンならではのダイレクトな魚の反応を楽しみつつ、2匹目の平鯵を波止上に抜き上げた。
向かい風の再来に苦戦
今日の自分は違う。今までの分を取り返すぞと意気込むが、6時過ぎから向かい風の再来に超遠投が上手くいかなくなり、苦戦を余儀なくされる。
周りの釣況も沈静化に転じたが、その中で一人だけ、ポツリ、ポツリと平鯵の釣果を重ねていたのが、やや西寄りに釣り座を構えたベテラン師。向かい風なりに遠くへ仕掛けを投げ入れ、魚の回遊のポイントを見事に捉えたようだ。
タナを下げて3匹目を追釣
7時半頃に、ベテラン師のペースが上がってきた。その隣の釣り人も平鯵を釣り上げ、私だけが取り残されつつあった。ここで思い切ってベテラン師に声をかけてアドバイスを求めると、「タナは7ヒロか8ヒロで、ポイントはかなり遠めにかわってますね」と快く応じてくれた。そこでタナをウキ下8ヒロに下げ、超遠投を試みる。
たまたまタイミングが合って遠くに飛ばせた時に、幸運にも魚が食いついてくれた。この1匹を逃すまいと、慎重に慎重を重ねて波止際に寄せてからの抜き上げが決まって、3匹目の平鯵の捕獲に成功。ベテラン師に釣らせてもらった1匹に感謝だ。
この後、近投の失投が不幸中の幸いとなった珍客の22cmの丸々と太ったイソベラ1匹を追釣して納竿した。最終釣果は29cm~27cmの型揃いの平鯵3匹、22cmのイソベラ1匹と、まだまだ数は物足りないものの、4回目の釣行でようやく格好のついた釣果を手にして、9時の迎え便で新波止を後にした。
船着き場に戻ると、おかみさんが明るく迎えてくれて、平鯵3匹の釣果を報告。早上がりの釣り人の中では40cm級のアコウを仕留めたルアーマンと、波止グレ7匹の常連の釣果が光っていた。釣果は夕食のお惣菜となり、苦労を重ねた分、いっそう美味しく感じられた。
今後の見通し
今回紹介した平鯵の回遊は短い周期で断続的に訪れ、秋までチャンスがある。青物の群れも散発的だが、和歌山の沖波止とあってタチウオの回遊は今後勢いを増してくるものと思われる。
船長の話では、盛夏には落とし込み・ヘチ釣りでのチヌ狙い、秋に入るとノマセ釣りで青物も狙えるとのことだ。水軒渡船のホームページの釣果情報は、上書き形式で過去の釣果は残らないので、こまめにチェックしてほしい。
<伴野慶幸/TSURINEWSライター>
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